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土浦・宍塚大池の耕作放棄地再生
茨城大学とNPO、企業との連携

 NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」と農学部の黒田久雄教授は、株式会社小松製作所(コマツ)の協力を得て、2020年2月18日に土浦市の宍塚大池周辺の耕作放棄地再生活動を実施しました。全国で問題となる里山の荒廃とその再生を目指し、コマツ茨城工場およびコマツ茨城(株)を中心とした協力体制のもと、コマツの「農業用ブルドーザ」を活用した取り組みです。コーディネートを担当した茨城大学研究・産学官連携機構の平山太市URAの報告です。

住民が始めた里山保全活動

 茨城県土浦市宍塚にある宍塚大池とその周辺には、市街化が進んだ市内において未だ多様な生物や植物が暮らしています。また、貝塚や古墳などの遺跡も多く残されており、様々な時代の歴史を今に伝えています。

 里山は、かつて燃料としての薪の収集、谷津田での水稲作、丘陵での畑作など人々の生活と共に維持されてきました。しかし、生活様式の変化や耕作放棄により里山の自然環境は大きく変化し、その姿を失いつつあります。

宍塚大池

荒廃した里山の現状

 この状況に対し、近隣住民が中心となって1986年に「宍塚の自然と歴史の会」(2003NPO法人化)が設立されました。同団体では、地権者の協力を得ながら里山の保全、環境教育、自然調査、歴史資料収集などの活動を行っています。

 本学農学部の黒田久雄教授は、里山の荒廃問題を契機にこのNPOの活動や宍塚大池の現状を知り、保全活動に加わりながら、専門家として宍塚大池の水質や大池周辺の谷津田、湿地等の環境について調査・研究に取り組んでいます。

コマツの農業用ブルドーザを活用した地域との連携活動

 一方、コマツ茨城工場(ひたちなか市)と本学の研究・産学連携機構は、コマツが開発した「農業用ブルドーザ」を活用する共同研究や地域との連携活動の可能性について、意見交換を進め、農学部での研究交流イベント等を実施してきました。その中で、黒田教授がコマツ茨城工場に宍塚大池地区の谷津田の耕作放棄地再生活動への協力を依頼しました。

 コマツでは2011年から、創業の地である石川県の小松工場跡地にオープンした「こまつの杜」にて、里山の自然観察などを通じて地域の子どもたちの育成や環境の保全に取り組んでいます。また、コマツ茨城工場でも、地域への貢献として自社の強みを生かした活動を検討されていました。このため、黒田教授からの依頼に関心を持っていただき、今回の活動へ協力いただけることとなりました。

現地での作業を経て

 事前の下見や作業内容の打合せを経て、2020218日にコマツのブルドーザで対象エリアでの活動を実施しました。作業にあたっては、コマツ茨城工場、コマツ茨城(株)が中心になり機体や人員を手配いただきました。搬入経路の路面保護のため、ゴム製の履帯(クローラ)装着機をコマツ福島(株)から取り寄せていただき、その操縦には石川県のコマツ粟津工場から熟練オペレーターに参加いただきました。

 今回、耕作放棄地再生活動を行ったエリアは、かつて畑作が行われていた約2,000平米の土地です。現在は、耕作放棄によりアオキ、笹、藤などが繁茂して植物生態系が崩壊し、人の背丈を超えるほどに成長したアオキ等は人力の除去が困難な状況となっていました。

 作業に用いた機体は、農業用アタッチメントを装着できるように改良されたコマツの「農業用ブルドーザ」です。このブルドーザは、コマツのラインナップの中では最も小さな機体で、作業エリアまでの散策路の通行や立木の間での作業も問題なく実施することができました。別の履帯を装着すると、超湿地ブルドーザとなり軟弱な地盤の荒廃した谷津田再生にも利用が可能です。今回は、試験として軟弱地盤の谷津田ではなくこの場所を選定しました。

 一方、小型な機体ながらブルドーザ特有のパワーや走行性能は十分に備えており、手のつけようのないほどの茂みはブルドーザが一往復するたびに明るく開かれていきました。手作業では、のこぎりやチェーンソーで除去しなければならない立木も、ブルドーザ前方のブレード(排土板)でなぎ倒すことができました。地上の茂みや立木を一掃した後は、地下に残るアオキなど根茎を除去することを狙いとし、可能な限り表土の一部を削り取りました。


農業用ブルドーザによる植生の伐採

https://www.ibaraki.ac.jp/news/2020/03/nouKomatsu4.JPG
農業用ブルドーザによる整地作業


農業用ブルドーザ、ロータリ装置による作業

 同日午前から開始した作業は午後には完了し、これまで光の入らなかったエリアに夕日が差し込みました。

 今後は、「宍塚の自然と歴史の会」と黒田教授らが、対象エリアの、土壌状態の変化、植生の回復を経過観察し、今回の作業の効果を検証していきます。作業の効果が認められれば、全国で荒廃が進む里山、谷津田の再生に有力な手法として提案することも可能です。



作業前の状況


作業後の状況

(報告:茨城大学研究・産学官連携機構URA 平山太市)