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ディスプレイに革命!安価で発光効率の高い「有機EL」の開発めざす
―工学部・吾郷友宏准教授に聞く

 スマートフォンやテレビのディスプレイの薄型化が進み、折り畳んだり巻いたりできる商品の普及が今後進みそうです。そんな新型ディスプレイの未来を支えるものとして良く耳にするのが「有機EL」です。茨城大学工学部の吾郷友宏准教授の研究室では、安価で性能の良い有機ELの開発をめざし、さまざまな有機化合物の作製や実験に取り組んでいます。そもそも「有機EL」って何??という素朴な質問から聞いてみました。

―「有機EL」という言葉を良く聞くようになりました。有機ELとはどういうものなのでしょうか?

吾郷「有機ELの『EL』というのは『electroluminescence(エレクトロルミネッサンス)』の略です。有機化合物が電気によって発光する現象や、それを利用した仕組み、製品のことを指します」

―「LED(発光ダイオード)」とは違うのですか?

吾郷「日本では有機ELが有機半導体、LEDは無機半導体という形で区別されることがありますが、物質の発光現象を利用した製品・材料という点ではELLEDも同じものを指しています。有機ELは欧米では『OLEDOrganic Light Emitting Diode)』と呼ばれることのほうが一般的です」

agouel2.jpg吾郷准教授

―有機ELを利用することで、どうしてディスプレイが薄くなるのでしょうか。

吾郷「現在スマートフォンやテレビで多く使われている液晶ディスプレイは、白く光る蛍光灯に、光の三原色のカラーフィルターをつけるような形で発色を調整しています。さらにそれらの中から映像に必要な光を目に届けるために、偏光ガラスの搭載も必要です。そのため、薄くするといっても限界があり、ましてや折りたたんだり巻いたり...というのは難しい。
 それに対して、有機LEDは有機化合物そのものがいろんな色に光る現象を利用するので、それぞれがきちんと発色できていれば、原理的にはカラーフィルターや偏光ガラスは不要になります。だから薄く、なおかつ美しい発色が可能となるのです。
 これは電力の面でも有効で、液晶ディスプレイの場合だと、色の選別はカラーフィルターが行うから、その裏の蛍光灯は常につけておかなければならない。無駄な電力を消費してしまいます。一方で有機ELであれば、必要な色だけ光らせれば良いから効率的です」

―なるほど。そんなに便利なものなら、もっと普及しても良さそうですが、何が課題となっているのでしょうか。

吾郷「ひとつは発光効率ですね。高い発光効率を出すためには、化合物に希少な金属、いわゆるレアアースなどを入れる必要があるのですが、そうすると高価になってしまう。青色LEDの開発はノーベル賞受賞にもつながった成果でしたが、有機ELでも青色の光をきれいに、かつ長い時間得ることができるかが重要です」

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―レアアースを用いずに発光効率を高めることはできないのでしょうか。

吾郷「私が取り組んでいるのが、まさにその研究です。2012年に、日本の研究チームが、炭素、水素、窒素といったありふれた元素のみを使って、発光効率がきわめて高い有機ELの開発に成功しました。さらに、これは私自身の研究ですが、梯子状をした頑丈な分子骨格にホウ素と窒素もしくは硫黄を混ぜることで、青色から赤色に至る幅広い波長の発光をする化合物を開発しました。これに、「電子ドナー」と呼ぶのですが、芳香族アミンという物質を組み合わせることで、純度が高い青色発光体ができました」

agouel4.jpg光エネルギーによっても青く発光する。この色純度を上げることが課題だ。

―ありふれた元素で青色に光る有機ELができたのですね。もう実用化できそうなのでしょうか?

吾郷「残念ながら、ディスプレイのメーカーの方に言わせると、まだまだ色の純度が低いようです。私たちが作った有機EL化合物の発光スペクトルを測ったこちらの図を見てください。

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山の形のピーク部分の波長がまさに青色なのですが、裾野が広がってしまっています。これがもっと細い形にならないと、製品としてはまだまだ使えないようです」

―そうなんですね。どうすれば色の純度を上げられるのですか?

吾郷「分子の結合をできるだけガッチリ固めて、ブレが出ないようにすることです。とても技術の要ることですね。研究室にとっても今後の大きな課題です」

―薄型ディスプレイというと、韓国のメーカーに勢いがあるように見えます。

吾郷「そうですね。最終製品としてのディスプレイは韓国が強いですが、一方で発光純度の高い有機ELの作製やそのための機器の開発・製造では、日本のメーカーがかなり活躍しています。私たち研究者もぜひ貢献していきたいです。記事をご覧になっている方も応援してください!」

(取材・構成:茨城大学広報室)

教員情報

吾郷友宏(あごうともひろ)●茨城大学大学院理工学研究科(工学野)准教授

専門は有機化学、機能物性化学、合成化学。さまざまな自然元素の特徴を活かした新しい有機化合物を創り出し、それらの性質や機能を明らかにすることを目指す。2017年に茨城大学に着任。理学博士(2007年、東京大学)。

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