1. ホーム
  2. NEWS
  3. 【iOP】第1回iOP-AWARD―主体的な学修活動「iOP」のすばらしい成果を表彰

【iOP】第1回iOP-AWARD
―主体的な学修活動「iOP」のすばらしい成果を表彰

 3年次の第3クォーターは必修科目を原則的に開講せず、夏季休業期間とあわせてさまざまな現場での主体的な学修に取り組むための期間「iOPinternship Off-campus Program)クォーター」とする――茨城大学の教育改革の一番の目玉ともいえる「iOP」。初めての本格実施となった今年度は、531人の学生が計719件の活動を行いました。

 今回、それらの中から特にすばらしい成果をあげた活動を表彰する「iOP-AWARD」という取り組みも初めて実施。学生によるエントリー後、書類選考(一次選考)、学生・役員・教職員の投票によるポスター選考(二次選考)を経て選ばれた7件の活動の公開選考・表彰式が、221日に水戸キャンパスで行われました。

<海外研修>ベトナム児童福祉・英語教育ボランティア

iopaw1.jpg

 教育学部英語選修の中山玲那さんは、「世界の教育に携わりたい。そのためにもさまざまな国の状況を知りたい」という思いに突き動かされ、単身でベトナムへ赴き、孤児たちやかつて戦争で使われた枯葉剤などの影響で障害のある子どもたちを対象としたチャイルドケアのボランティアを行いました。さらに現地で英語教育の人手が足りず、急遽そのサポートをすることにもなったそうです。

 その経験を通して見えてきたのは、子どもたちへの暴力が当然のように行われ、「『教育』以前の『調教』」(中山さん)という実情であり、その背景としての現地職員の教育的な知識のなさや、医療の専門家などと連携したチームによる長期的な支援活動の不足でした。

「そのような状況にチームで関わる体制をつくる、という具体的な意志をもてたことが最も大きなことでした」と中山さんは振り返ります。その想いをもとに、大学卒業後は学校づくりなどを通して、国内や恵まれない国の子どもたちに英語を学べる機会を提供する仕事をしたいと考えているそうです。

<海外研修>5週間のニュージーランド海外研修

iopaw2.jpg

 5週間のニュージーランド研修の報告を行ったのは、農学部食生命科学科の宇賀神温さん。「英語が苦手で人とのコミュニケーションが苦手。日本の文化を客観的に見てみたいと思い、気候や治安の良さは日本と共通していながら文化や考え方が異なるニュージーランドに行きました」と語ります。

 ニュージーランドでは、語学学校での4週間の学習と、1週間のファームステイを経験。語学学校での研修では、現地の人たちへのアンケート調査を実施。その質問は「『仕事』と聞いて思いつくことは何か?」や「自分自身を価値ある存在だと思うか?」といったもの。「日本で感じる窮屈さがどこから来るのか知りたかったんです。また、『仕事』についてもマイナスイメージしか持っていなかったので、いろんな方の考え方を聞いてみたいと思いました」と宇賀神さん。

調査の結果、日本の人たちに比べ、ニュージーランドの人たちは「仕事」のイメージを他者に関わるものとして捉え、他者の満足と自分の満足とを引き合わせて達成感を得ている傾向にあることがわかりました。また、「自分自身を価値ある存在だと思うか?」という質問に「はい」と答えた日本人の割合が少なく、その結果についてホストファミリーが語った、「どうして自分が自分であることに価値をもてないのか」という言葉が印象的だったそうです。

これらの経験から、さまざまな人とのコミュニケーションには自己開示と寛大さが必要なことを実感し、また仕事についても前向きな憧れのイメージをもてた、とまとめた宇賀神さん。直近の目標は、自分の専攻の研究で国際学会に参加することだそうです。

<インターンシップ>特別支援学校教育インターンシップ

iopaw3.jpg

 教育学部の橋本花恵さんは数学選修ですが、通常学級にも特別な支援を必要する子どもたちが一定数いることから、さまざまな子どもたちの特性を学びたいと、iOPの「学校インターンシップ」として、特別支援学校の算数の授業にかかわりました。

 橋本さんが授業見学・補助を行ったのは、知的障害のある小学6年生の子どもたちのクラス。そこでは、橋本さんがこれまで意識していなかったような子どものグループ分けや教育法を学ぶことができました。たとえば、教材からイラストなどの要素を省くことで集中力を持続させるという工夫や、硬貨など実際の日用品をそのまま利用できる教材などが印象に残ったそうです。

 今回のインターンシップで得たことは、「算数を教える前に、その子に他の困難があるかも知れないと考えることが必要」という視点だと語った橋本さん。現在、特別支援教育の免許取得も新たに目指し、多くの授業を履修しているそう。自身の子ども理解を広げるため、日々努力をしていることがうかがえました。

<インターンシップ>水戸少年鑑別所・少年院インターンシップ

iopaw4.jpg

 冒頭でベトナムでのチャイルドケアボランティアの活動を紹介した教育学部の中山玲那さん。今回、さらに水戸少年鑑別所・少年院でのインターンシップも経験しました。iOPは複数の活動をエントリーすることが可能なのです。

 このインターンシップでは、水戸少年鑑別所や少年院の水府学院において、施設見学や子どもたちの行動観察、模擬面談や護衛術の練習、暴力防止講座の見学などを行いました。そこでの教官の声かけの様子に、学校で見られる子どもの接し方との違いも見られ、印象に残ったそうです。

 これから学校現場で働くにあたって、さまざまな子どもたちに触れ、知りたいと思ったのが参加動機だったという中山さん。そこで出会った「本当は素直な子どもたち」(中山さん)がなぜ非行につながったのか、ということを考える視点が自身の中で深く宿ったようです。

 また、少年鑑別所・少年院とベトナムの孤児院という2つのフィールドから、「子どもが親から見守られていることがいかに重要か」ということを実感したとのこと。国内外の状況を俯瞰的な視点で捉えながら、教員という夢へ向けた専門的な知識を得ることができました。

<サービスラーニング>小学生の野外活動実習ボランティア

iopaw5.jpg

 農学部食生命科学科の佐藤絢音さんは、夏休みの期間中、茨城県立中央青年の家(土浦市)における小学生の野外活動実習のボランティアに参加し、実習の準備・補助・片付けや企画運営のサポートを行いました。

 そこで学んだこととして佐藤さんが強調したのが、「知ろうとする力」「人として向き合うことの大切さ」。そのきっかけは、活動の初日に泣き出してしまった小学生。佐藤さんは「たいした理由じゃなく、すぐ泣き止んでケロッとするに違いない」と思っていたのですが、別のボランティア学生がしっかりと話を聞いてあげて適切に対処したところ、その後は元気になり、ずっとそのボランティア学生のことを信頼していた様子だったそうです。

 この経験から、「『子どもはこういうものだ』と型にはめず、ひとりの人として向き合うことが大切」という佐藤さん。また、初対面の他のボランティア学生と、45日の体験を通じて打ち解けることができことも大きな自信になったようです。

<発展学修>sucSeed & team結~地域活性化に向けて~

iopaw6.jpg

 人文社会科学部の地域志向科目「プロジェクト演習I・Ⅱ」という授業で、水戸のワインツーリズムの活動に取り組んだ6人の学生が、その経験をもとに「就職」をテーマにした新たなプロジェクトを立ち上げました。

 ワインツーリズムの活動は、sucSeedというチーム名で、県外から県内へ観光客を呼び込む「和in水戸ツアー」というバスツアーを自らプロデュースするというもの。おととし(2018年)秋に実施したツアーには22人の方が参加し、アンコウ料理とワイン、偕楽園で和菓子とワイン...と、水戸産のワインと観光を楽しんでもらったそうです。一方でツアーの企画・運営を通して長期的な見通しがもてていなかったり、報告・連絡・相談が不十分だったりしたことが反省点として残りました。

 そこでメンバーは、今度は違う切り口から「地域」にアプローチする企画を展開。今度は「team結」として、地域活性化や地域貢献に取り組んでいる地元企業と交流するイベントを自ら立ち上げ、反省も活かして企画を進めました。自分たちで企業を訪問して趣旨を理解してもらい、当日は学生自身の感覚を大事にして、本音で語り合えるような雰囲気や仕組みづくりを工夫したそうです。授業での体験を主体的な活動へと着実につなぐことができました。

<発展学修>カンボジアの教育環境に関する社会調査演習と分析

iopaw7.jpg

 今回の公開選考の最後のプレゼンテーションに臨んだのは、人文社会科学部でカンボジアのフィールドワークを行った学生たち。国連の持続的な開発目標「SDGs」を念頭に、カンボジアの教育の状況を知るため、事前に多くの時間をかけて社会調査の方法を学んだり、背景となる知識を勉強したりした上で、カンボジアでは英語を使って学校や行政の関係者などへのインタビュー調査を行いました(参考記事)。

 調査の結果、現在のカンボジアの教育に関する最大の課題が、都市と地方の教員の質の格差や中等教育以降のドロップアウト率の高さなどにあることがわかったとのこと。今後、報告書も刊行するとともに、今回のフィールドワークの成果をもとにした質の高い卒業論文を執筆したい、と意気込みを語ってくれました。

 先日開催した報告会には、2年生の学生たちも多く参加してくれたのとのこと。「2年生たちも来年度の海外でのフィールドワークに不安をもっていたようですが、私たちの中にも初めて海外へ行くメンバーがいたことなどを紹介する中で、安心感をもってもらえたようです」と語りました。

最優秀賞は農学部・宇賀神温さんの「5週間のニュージーランド海外研修」

iopaw8r.JPG

 選考の結果、iOP-AWARD初の最優秀賞は農学部・宇賀神温さんに贈られました。

 現場での多様な体験を通じて、自らのキャリアや力を見つめなおすという「iOP」の狙いと、海外の境地でまさにそういう視点と重なる調査活動を行い、自らの新しい価値観に活かすことができたという宇賀神さんの報告が、審査員の印象に強く残ったようです。

 受賞を受けて宇賀神さんは、「私はAIMSプログラムにも興味があり、AIMSは他の大学でも参加できるのですが、必修のない期間を設ける大学というのは茨城大学だけでした。その新しい試みのおかげで、海外でさまざまな経験をすることができ、今後の人生に活かせることを嬉しく思います」と語りました。

 最後に挨拶をした太田寛行理事(教育統括)・副学長は、「大学憲章で掲げる『働く人材を育てる』『暮らしていく市民を育てる』『学び続ける人間を育てる』という3つの機能を含む、どれもすばらしい発表で、これからも続け、後輩たちにも伝えていけるものと確信できました。このiOPでの体験をこれからの人生に活かしてくれることが、私たち大学教育を担う者の夢です。ぜひがんばってください」とエールを送りました。

2019年度 iOP-AWARD受賞者

最優秀賞

  • 【海外研修】「5週間のニュージーランド海外研修」
    農学部食生命科学科 宇賀神 温

優秀賞

  • 【海外研修】「ベトナム児童福祉・英語教育ボランティア」
    教育学部学校教育教員養成課程英語選修 中山 玲那
  • 【インターンシップ】「特別支援学校教育インターンシップ」
    教育学部学校教育教員養成課程数学選修 橋本 花恵
  • 【サービスラーニング】「小学生の野外活動実習ボランティア」
    農学部食生命科学科 佐藤 絢音
  • 【発展学修】「sucSeed & team結~地域活性化に向けて~」
    人文社会科学部 廣木 彩乃・小野瀬 篤美・青木 玲奈・重富 優希・岸 朱里・鈴木 葵

奨励賞

  • 【海外研修】「ある日突然、思い立ったのです。そうだ!アフリカへ行こう、と。」
    人文社会科学部法律経済学科 重富 優希
  • 【インターンシップ】「小学校(母校)での教育インターンシップ」
    教育学部学校教育教員養成課程英語選修 吉澤 侑
  • 【インターンシップ】「少年矯正施設インターンシップ」
    農学部食生命科学科 佐藤 絢音
  • 【インターンシップ】「幼稚園・小・中学校での教育インターンシップ」
    教育学部学校教育教員養成課程技術選修 服部 恭大
  • 【インターンシップ】「水戸少年鑑別所・少年院インターシップ」
    教育学部学校教育教員養成課程英語選修 中山 玲那
  • 【インターンシップ】「SDGs体感インターンシップ」
    人文社会科学部 郡山 葵・重富 優希、農学部 松井 菜摘
  • 【発展学修】「データマイニング入門(データサイエンス)」
    理学部理学科学際理学コース 富田 大樹
  • 【発展学修】「オリエンテーリング大会企画」
    教育学部学校教育教員養成課程数学選修 橋本 花恵
  • 【発展学修】「カンボジアの教育環境に関する社会調査演習と分析」
    人文社会科学部 長谷川 美波・郡山 葵

iopaw9.jpg

(取材・構成:茨城大学広報室)