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日越大学・学生インタビュー ー日本での「海外インターンシップ」を経験して

 ベトナムのハノイにある日越大学。日本とベトナムの協力により2016年につくられた大学で、修士課程の「気候変動・開発プログラム」は、茨城大学が幹事大学としてカリキュラムづくりや教員のコーディネートなどを担当しています。
 2018年に開講したこのプログラムの第一期生である修士2年次の学生20人が、「海外インターンシップ」として茨城大学を拠点として1747日間(学生によって滞在期間が異なる)の実習・研修に取り組みました。それぞれの指導教員の先生のもとで行った実践的な研修は、学生にとって大変刺激的な経験になったようです。インターンシップに取り組んだ学生たちにインタビューをしました。

日本の個人から組織レベルに至るまでの幅広い適応策から得た教訓

Nguyen Van Quangさん


―日本でのインターンシップにおいてどのようなことが印象に残っていますか。

Quang)印象に残った経験は、台風19号の災害ボランティア(参考記事)に参加した時のことです。日本では地域の人が数多くボランティアに登録しており、ボランティアセンターが適切かつ効率的に人員配置する仕組み自体に強く感銘を受けました。また、その際に台風19号の話を詳しく聞くこともでき、多くの教訓を得ることができました。例えば、災害についての事前警報システム、実際の迅速な避難体制、また災害後の迅速な復旧状況など、日本では災害の起こる前と後に効率的かつ効果的に人々の生活環境を保全するようなシステムが体系化されていることを実感しました。
さらに、各関連機関訪問において、日本が持つ地理情報システム(GISGeographic Information System)などの高い技術力を使った組織レベルでの適応策から、常総市において国交省下館河川事務所が実施していた「マイタイムライン」、「逃げキッド」の個人レベルでの活用に至るまで幅広く感銘を受けました。このような自然災害に対する取り組みを是非ベトナムへ適用したいと思っています。

―今回のインターンシップでの経験は今後どのように活用できると考えていますか。

Quang)最近、ベトナムの気候変動の研究者たちは異分野の研究者や他機関とも連携しながら、これまでの災害の経験やアイディアを構築し、将来のための適応政策を政府に提案しているところです。ただ、これを具体的な政策などへ反映していくには、まだまだ時間がかかると思います。
ベトナムでの気候変動問題に対する認識はここ数年で一気に高まってきたと感じています。このような大衆的な認識の高まりを反映しながら、国として具体的な気候変動対策を考案していくことは今後の課題です。
今回、私たちはインターンシップにおいて、日本での個人から組織に至るまでの幅広い適応の知恵や体制について、実際に目で見て体感したことで、非常に多くのことを教訓として学びました。今回得た様々な教訓は今後のベトナムにおける気候変動対策における具体的な実践へとつなげていけると信じています。

水戸市における災害ボランティアの様子

まだまだ気候変動への認識が低いアフリカ。これ以上後回しにされないために今何ができるのか

Azu Anthony Anwaniさん

https://www.ibaraki.ac.jp/news/2020/01/Azu2.JPG
―あなたの専攻について教えてください。

Azu)僕のもともとの専攻は哲学でした。母国のナイジェリアで学ぶうちに、個人個人の意識は社会環境に大きく影響されていると気が付きました。特に気候変動問題に関しては、アフリカはアジアのように大きな災害がないため、人々の意識が低い傾向にあります。「適応」や「緩和」と言われても、自分達にはあまり関係ないと思っており、社会全体の関心が向かないのです。ただそうは言っても、アフリカにも沿岸域の一部では、海面上昇による洪水被害に悩まされている場所もあり、その地域の人々は被害を受けています。このことから、自然環境を視野に入れながら社会科学を研究対象とするようになりました。ただアフリカでは「気候変動」専攻という分野はなく、地理学の一部としてしか扱われていません。それゆえ、気候変動の修士課程は存在しないのです。これでは多くを学べないと思い、実際に災害被害に遭っているベトナムで開講されている日越大学のプログラムにおいて気候変動を学ぶことを決心しました。

―日本でのインターンシップにおいてどのようなことが印象に残っていますか。

Azu)今回、日本でインターンシップを行うことはとてもチャレンジングなことです。日本は、どこに行っても綺麗で、人々は優しく、協力し合っていて、その上技術力が高く、予想通りの素晴らしい国だと感じました。
インターンシップにおいては、特に阿見キャンパスでの圃場見学が印象的でした。アフリカでは家畜施設を見学できる機会はあまりないため、家畜を身近に感じることができ、とても新鮮でした。日本では、あのように現場の知識や技術を提供している場が非常に多く、地域の人々に気候変動をはじめ様々な状況を認識してもらえるような機会が多いと感じています。人は自ら経験したことは忘れないと思うのです。

https://www.ibaraki.ac.jp/news/2020/01/Quang1.JPG 農業総合センターにおける県内野菜・果実の説明を受ける様子

―将来は気候変動分野において、どのように活躍したいと考えていますか。

Azu) アフリカでは、先述したように気候変動リスクに対する認識はまだまだ低い傾向にあります。貧困や教育、インフラ整備等のその他の問題が多いため、気候変動と聞くと後回しにされがちなのです。ですがアフリカ全土において、2025年頃には影響被害が随分と増えてくると予想されることから、人々の認識を変えていかなくてはならないと感じています。将来的に国の政府は気候変動に関する法制度や政策を整備する必要もあると感じています。そのために、まずはゴミのポイ捨てをしないなどの個人レベルでの変化が大切だと思います。一人一人のこのような小さな変化がアフリカの将来により良い効果をもたらすと信じています。

阿見キャンパスにおける圃場案内

日本人の「綺麗な水」に対する意識の高さを実感

Thai Trong Nghiaさん


―今回、農学部の吉田貢士准教授の研究室訪問はいかがでしたか。

Nghia)普段、日越大学では「水資源管理」について研究しています。ベトナムの養殖事業として、バサやナマズなどが使われていますが、最近、家庭から出る生活排水やゴミ、工業排水などの影響が主に河川・湖沼などにあり、水質汚染をもたらしています。特に中国やカンボジアなどの近隣諸国からの汚染水の影響が強い傾向にあります。
今回、農学部の吉田先生のご指導のもと、滋賀県高島市針江地区に行き、地元での水管理方法を見に行きました。そこでは、山に降った雪や雨を各家庭に自噴させ、それを飲料や炊事などの日常生活に利用する「川端(かばた)」と呼ばれる文化が存在しています。
特に感心したことは、地元の人々はもちろんのこと、観光客も水を綺麗に保とうという意識が高いということでした。それに加え、豪雨などの水災害に備えた河川のインフラ整備などに対して、国が一体となり、きちんと財源を充てているということです。今後はベトナムにおいても、日本と同様に、観光客に対して「ゴミを捨てない」という基本的なことから、環境保全への認識を高めていく必要があると感じます。そうして、地元民と観光客とが一体となることで、将来的には国が具体的な治水計画を講じるための後押しができたらと思っています。

https://www.ibaraki.ac.jp/news/2020/01/jikken1.png 湧水を利用したコイの養殖


地域住民による水路の維持管理

プラスティック削減に向け市民のできる"positive action"の模索

Nguyen Thi Dang Hueさん


北先生より修了証明書の授与

―長期滞在において印象的だったことについて教えてください。

Hue)インターンシップで特に印象的だったことは、企業訪問でベトナムに進出している月の井酒造(大洗)の社長さんにお話を伺ったことです。会社としての取り組みや現地での苦労話などのお話を聞くことができ、とても有意義でした。また茨城大学の華茶道部で、茶道体験をし、日本文化と深くつながることができたことも貴重な経験でした。
普段の研究テーマは「使い捨てプラスティックの削減に対する人々の意識」です。今回の実習で、「使い捨てプラスティックにおける意識」についてのアンケートを作成する過程で、先生方にアンケートの目的を明確にした方が良いとの助言を頂き、丁寧にサポートして頂きました。
現在、ベトナム、日本双方において使い捨てプラスティックによるゴミの集積が問題となっています。特に、日本においては埋立地の不足、ベトナムにおいては将来の人口増加によるゴミの増加が挙げられます。これに関して現在の対策には限界があるため、市民の意識調査を通じて、今後別の対策を検討し、ここから市民が習慣にできる"positive action"を提案したいと思います。

日本文化(茶道)体験

学生側から見て取り組みやすいMCCDプログラムの構成

Do Duy Tungさん


―長期滞在において、印象的だったことを教えてください。

(Tung)インターンシップでは筑波山での経験が印象的でした。自分の足で登ったため、日本の自然の美しさを肌で感じることができました。また、MCCDプログラム学生の中には、母親だったり、他に仕事を持ちながら学んでいる学生もいたりと様々な生活スタイルを持っているため、短期実習と長期実習とで分かれて参加することができ、学生側から見ても取り組みやすいプログラム構成だったと思います。
私は、「ベトナムにおける健康被害の軽減や農作物の収穫量改善などにつながるSLCPs(気候汚染物質)の削減」について研究しています。SLCPsとは、化石燃料やバイオマスを燃焼させた際に発生する物質を表し、気候を温暖化させる特性を強く備えている物質のことを指します。今後の気候変動問題へのより有効な対策として、二酸化炭素(CO₂)の削減だけでは十分でなく、このSLCPs(気候汚染物質)を少しでも削減していくことが必要とされています。
研究室では、先生がモニタリング装置などの使い方を丁寧に指導してくれて、研究計画がうまく遂行するようサポートしてくれました。また、福島と金沢の地方気象台を訪問するにあたり、震災による影響を強く受けた地域であったため、事前に許可を取得してもらい、スムーズに現地訪問することができました。そして、そこでの大気圏観測データが震災以降の人々の生活により多くの安心感を与えていることを実感しました。今後は、今回使用したような新しい技術、集積データ、気候変動関連の文献をうまく収集しながら、自然科学研究に関する方法論を自分なりに確立していきたいと考えています。

https://www.ibaraki.ac.jp/news/2020/01/Tung2.JPG茨城学生国際会議参加の様子