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茨城大学での観測で発見―重い原始星が吐き出す「熱の波」

 重い原始星が育っていくときに発する「熱の波」が目撃されました。理論的に説明できていなかった重い星の形成過程について理解が進むと期待されます。茨城大学での観測による発見がきっかけとなったこの研究成果は、英国の天文学専門誌「Nature Astronomy」に2020年1月13日付で発表されました。

背景

 星空には太陽の何十倍も重い星がたくさん存在しています。しかし、星形成の理論からは、原始星からの強い光に阻まれて、星は太陽の8倍以上の重さに成長できないと推定されています。この理論と現実との不一致に、天文学者は数十年も悩まされてきました。
 解決策のひとつとして、重い原始星は短時間の「爆発的な降着(降着バースト)」を繰り返すことによって質量を増やすというアイディアがあります。周囲からガスが一気に原始星に落ち込み、短期間に多くの質量を獲得する一方、数百年から数千年に1回の降着バースト以外の時期には静穏であるというモデルです。ただ、降着バーストの期間は短く、また原始星はガスや塵に覆われていて可視光での観測は難しいため、降着バーストを観測的に捉えることは困難でした。

研究手法・成果

 20191月、茨城大学理学部附属宇宙科学教育研究センターが理学部電波天文観測研究室と共同で茨城県日立市の32m電波望遠鏡を用いて毎日行っている監視観測で、へびつかい座の方向にある「G358-MM1」という重い原始星において、降着バーストにつながる兆候を発見しました。これに呼応して、国際的な共同研究チームである「メーザー監視機構」(Maser Monitoring Organization, M2O)が編成されました。M2Oでは、オーストラリア、ニュージーランド、そして南アフリカの複数の電波望遠鏡で同時観測することで、降着バーストを起こした原始星が出す熱によって生じる放射の細かい構造を調べることができます。国立天文台水沢VLBI観測所のロス・バーンズ(Ross Burns)さんが率いるこのチームは、数週間おきに得られた観測画像を比較して、G358-MM1の位置から外に向けて広がっていく「熱の波」を発見しました。さらに、この波が降着バーストによって引き起こされたことを、飛行機に搭載された赤外線望遠鏡ソフィア(SOFIA)を用いて確認しました。

今後の展望

 「M2Oによって、重い原始星への降着バーストが引き起こす現象が初めて詳細に捉えられました。これは、間欠的な降着によって重い原始星が育つという理論を支持する発見です。M2Oは、多数の観測者や理論家の全世界的な共同研究であり、このような突発的な現象についての観測計画の立案、観測実行、そしてその後のデータの解釈を緊密に連携して実施できたのです」とバーンズさんは語ります。M2Oでは今後も、重い原始星の性質や形成メカニズムについて、より詳しい研究を続ける予定です。

論文情報

  • タイトル:A heatwave of accretion energy traced by masers in the G358-MM1 high-mass protostar
  • 著者: A. Burns, K. Sugiyama, T. Hirota, Kee-Tae Kim, A. M. Sobolev, B. Stecklum, G. C. MacLeod, Y. Yonekura, M. Olech, G. Orosz, S. P. Ellingsen, L. Hyland, A. Caratti o Garatti, C. Brogan, T. R. Hunter, C. Phillips, S. P. van den Heever, J. Eislöffel, H. Linz, G. Surcis, J. O. Chibueze, W. Baan & B. Kramer
  • 雑誌名:Nature Astronomy
  • 掲載日:2020113日付
  • URLhttps://www.nature.com/articles/s41550-019-0989-3