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学長学術表彰、2019年度は4教員が受賞

 三村信男学長が「私の中で大変嬉しい機会が、1年のうちに3つあります」と明言しているものがある。ひとつめが優秀学生表彰、二つめが永年勤続職員表彰、そしてもうひとつが学長学術表彰だ。20191219日に開かれた今年度の茨城大学学長学術表彰の表彰式・受賞記念講演会では、4人の教員が学長から賞状と記念の盾を手渡された。今年度の受賞者の顔ぶれと研究成果を、講演の内容とともに紹介する。

茨城大学学長学術表彰とは

 茨城大学学長学術表彰とは、先進的あるいは独創的な研究を称え、その内容を学内外に広めることを目的に今から10年前に制定された制度。優秀賞と奨励賞があり、優秀賞は学会賞や文部科学大臣賞(科学技術賞)等を受賞するなど優秀な成果のあった教員に、奨励賞は若手研究者を対象に学会や文部科学省から表彰されるなど今後さらなる進展が期待される成果を出した教員に、それぞれ贈られる。
 過去には該当者のいない年もあったが、ここ数年は本学の教員の学会賞等の受賞が続いており、毎年複数の教員が受賞している。今年度は優秀賞1名、奨励賞3名の受賞者があった。

優秀賞:農学部 豊田淳教授

豊田教授

 今回優秀賞を受賞したのは農学部の豊田淳教授だ。豊田教授は昨年度「日本畜産学会賞」を受賞した。
 動物科学を専門とする豊田教授が茨城大学に着任したのは1997年。ここ10年ほど継続的に取り組んでいるのが、心理社会的なストレスによるさまざまな失調を、食によって予防できるかというテーマだ。この問いを明らかにするため、豊田教授は、強い心理社会的ストレスを与えられたマウス(慢性社会的敗北ストレスモデルマウス)を作製し、そのマウスにさまざまな飼料を与えて変化を見る実験を行っている。
 その結果から、たとえば、コーンスターチなどの精製原料で配合した飼料に比べて、トウモロコシのような天然飼料原料で配合した飼料を与え続けたマウスのほうが、心理社会的ストレスへの抵抗性(レジリエンス)が向上することがわかったという。また最近では、筑波山麓の特産品であるフクレミカンの機能性に関する研究成果も発表した。
 ストレスによるさまざまな影響を、食によって予防したり改善したりできるようになれば、とても意義のあることだ。とはいえ豊田教授曰く、これは「ものすごく根気の要る研究。心が折れそうになることもある」とのこと。それでも研究者仲間や学生たちのサポートもあり、今後も多くの成果が期待される。

奨励賞:人文社会科学部 川島佑介准教授

川島准教授

 政治学・行政学が専門の人文社会学部・川島佑介准教授の調査フィールドは、イギリス・ロンドンの「ドックランズ」という地区。テムズ川が大きく蛇行するポイントに位置するドックランズは、17世紀以降水運・物流の要所として栄えたが、第二次世界大戦や高度経済成長期を経て衰退。しかし1970年代から再開発が進み、今では高層ビルが立ち並び、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの表舞台にもなった。
 この再開発の経過を分析するにあたって、川島准教授は、経済成長重視のイギリス中央政府と旧住民の生活重視の地方自治体という従来の固定的な見方を疑い、理論と一次資料からそれぞれの政策選択を丁寧に解きほぐしていった。その結果、中央政府と地方自治体それぞれの政策選択はより複雑なものであることが明らかとなり、さらにそれらが形成され、変化していくメカニズムも明らかにされた。
 こうした実証結果からは、地方分権が進めば福祉も重視されるはずだという単純な図式は成り立たず、それが矛盾なく両立するには、中央政府が財政を保障し、なおかつ地方自治体間の競争を制限すること、すなわち中央政府による政府構造全体のデザインが必要であることが示唆された。
 川島准教授は、「政治学・行政学は、理論と実証に基づいて、事実と因果関係を明らかにする。それによって、われわれが政治的決定を行う際にヒントを与えられる」と語る。
 この成果は、『都市再開発から世界都市建設へ―ロンドン・ドックランズ再開発史研究』という著書として刊行され、公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所から第44回藤田賞が授与された。

奨励賞:人文社会科学部 加藤崇徳講師

加藤講師

 人文社会科学部の加藤崇徳講師の専門は経営学。
 企業が複数の事業を手がける多角化が広がる中、それぞれの事業の間の技術的な関連性が高ければ、特許の共有や近接分野の融合などによる相乗効果が期待される。そこで従来の経営では、技術そのものの類似性・補完性があるかが重視され、多角化を進めるポイントとなっていた。
 一方で、加藤講師が注目をしたのは技術の時間軸、すなわち技術変化のスピードだ。複数の技術分野が、たとえ内容面において相互補完的だとしても、その開発・普及の時間軸が大きく異なってしまうと適切な意思決定が難しくなり、業績悪化のリスクを高めてしまうというのだ。
 加藤講師はこの仮説を実証するために、中堅化学企業をサンプルとして、企業においてある登録特許が生まれてからその特許をもとにした次の登録特許が生まれるまでの期間などを指標とした分析を行った。その結果、売上に大きな影響を与える技術間の時間軸が多様化すると企業業績が落ちること、一方で他社よりも優れている技術間の時間軸が多様化すると企業業績が若干増加することなどが明らかになった。
 これらの成果を示した論文「技術多角化と技術の時間軸」が評価され、加藤講師は日本経営学会賞(論文部門)を受賞。
 今後の研究課題について加藤講師は、「意思決定の質や、異なる時間軸の技術分野の調整にかかるコーディネーション・コストまでも踏まえた因果関係の検証が必要」などと語った。

奨励賞:大学院理工学研究科(工学野) 鵜野将年准教授

鵜野准教授

 エネルギーの有効かつ効率的な利用を進めるために、太陽光パネルやバッテリーの性能を最大限に引き出す技術は重要だ。理工学研究科の鵜野将年准教授が取り組む「パワーエレクトロニクス」の研究はまさにその分野にダイレクトに貢献するものである。
 太陽光パネルにも、バッテリーに使われるリチウムイオン電池にも、アンバランスによる悪影響というものが生じる。たとえば太陽光パネルの場合、構成しているパネルのうちの1枚が雑草、鳥の糞などで影になって発電効率が下がると、それに連なっている他のパネルの発電効率も下がってしまうということが起こる。
 こうしたとき、電気エネルギーを複数のパネルやリチウムイオン電池にどう分配しなおすかという点が重要になる。それを研究するのが「パワーエレクトロニクス」という分野で、鵜野准教授によれば、「電力、エレクトロニクス、制御を融合した学際的な分野」とのこと。研究室ではさまざまな回路を試して、発電量の向上や充電状態の均一化の実現を図っている。
 これらの研究が進めば、たとえば電気自動車の湾曲したルーフ部分に太陽光パネルをとりつけても、影となる部分の影響を抑えることができるようになり、用途が一気に広がることが期待される。
 鵜野准教授は、電気学会と米国電気電子学会の共催によるIPEC-Niigata 2018においてThe Isao Takahashi Power Electronics Awardを受賞した。

(取材・構成:茨城大学広報室)