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クラウドファンディングでよみがえった貴重資料
―修繕された菅文庫を紹介

 茨城大学図書館には、旧水戸藩出身の史学者・菅政友(かんまさすけ・1824~1897)が所蔵していた貴重書の数々(菅文庫)が保管されています。約10,000冊に及ぶコレクションの中には、地域史を知る上でも重要な貴重な資料が多数含まれていましたが、寄贈された当初からカビや虫食いなどによる損傷が激しく、修繕が必要な状況でした。そこで今年春にクラウドファンディングを利用して支援を呼びかけたところ、多くの寄附が集まり、寄附金が寄せられ、修繕作業を進めることができました。
 今月、修繕した資料の一部をお披露目する特別展を開催するとともに、支援者へのお礼を兼ねたギャラリートーク&図書館バックヤードツアーも実施しました。皆様の協力によってよみがえった資料を、これからも大切に後世へとつないでいきます。

菅文庫とは

kanbunko2.jpg菅政友

 菅文庫は、水戸藩による『大日本史』の編纂にも携わった水戸学派の史学者である菅政友が蒐集した蔵書で、1951年に茨城大学設立期成会が菅家から購入、あるいは寄附されたものです。国書8000冊、漢籍2000冊、各種写本類など約10000冊の一大コレクションで、なかには茨城に関わる資料は本学のみに現存するものも含まれます。現在、デジタル画像化も順次進めているところです。

 一方で、菅文庫の中には、本学に寄贈される以前からカビや虫食いによる劣化が激しいものも多く、デジタル画像化の作業にも支障が出ていました。そこで茨城大学図書館では、今年春に修繕費用の寄附の協力を募るため、クラウドファンディングを活用。約1ヶ月間の募集期間で118万円の寄附が集まりました。

修繕された資料

 その後修繕作業を進め、9点の資料をよみがえらせることができました。111日~17日に図書館の展示室で開催した「水戸藩の史学者・菅政友が集めた1万点のコレクションを後世へ―菅文庫修繕資料お披露目展―」と題した特別展では、それらの資料を展示しました。その一部を写真で紹介します。

 まずは、戦国時代に武田信玄と上杉謙信との間で繰り広げられた川中島の戦いを、上杉軍優位の立場から伝える「河中島五箇度合戦記」という軍記の写本。菅自身が書写したもので、ところどころに残る朱書きの書き込みには、古典研究に対する菅の実直さもうかがえます。

 この資料の修繕前の姿がこちら。

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 下部を中心に複数の虫食い、破れがある状態でした。修繕にあたっては、まず一度綴じ糸を外して精製水で洗浄した上で、手漉きの楮紙を小麦でんぷん糊(生麩糊)で裏打ちします。その後綴じ糸を新調し、元の状態に綴じ直します。展覧会ではその工程も、映像や展示物で紹介しました。

 それらの作業を経てどのように修繕されたのでしょう。

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 破れの形跡が筋のように残っているものの、穴や切れ目が塞がれ、文字も映えるようになりました。

 続いては、茨城ゆかりの地理学者・長久保赤水(17171801)による紀行文「赤水先生東奥紀行」。各名所の図や石碑の図・碑文なども記録されている資料ですが、これも汚れと虫食いによる損傷が激しい状態でした。

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 この資料も前述のような洗浄と裏打ちを行い、各頁がきれいによみがえりました。

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 展覧会には1000人を超える方が来場し、アンケートからは「貴重な資料が美しく修復されて良かった。この活動を機会に、今後ますます地域の財産として多くの方に見てもらえるようになることを願っている」「和本類は年が経つと虫食い等が起きることは知っていたがこれ程ひどいとは思わなかった。今後、支援する機会があったら参加したい」などの声が寄せられました。

支援者へのお礼を兼ねたギャラリートーク

 特別展の会期中、茨苑祭2日目でもあった1117日には、クラウドファンディングで支援をしてくださった方へのお礼を兼ねたギャラリートークと図書館のバックヤードツアーも開催しました。

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 ギャラリートークは、日本中世史が専門の高橋修・人文社会科学部教授が担当。資料に登場する人物の肖像画なども見せながら、自身の研究内容も絡めながら解説をしました。また、その後は菅文庫が保管されている図書館内の貴重資料実習室に案内。参加者のみなさんに実際に菅文庫に触れてもらうとともに、資料のドライクリーニング体験も実施しました。

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 茨城大学図書館では、今後も貴重な資料の保存・活用を進めていくとともに、今回のように地域のみなさんにも資料に触れていただくような機会を提供していきます。引き続きみなさんのご理解、ご協力をお願いいたします。