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女性学生の農研機構訪問ツアー
―研究職ってどんな仕事?

 茨城大学ダイバーシティ推進室では、女性研究者が働きやすい環境づくりやワーク・ライフ・バランスの向上へ向けたさまざまな事業を行っているが、未来の女性研究者を増やすことも大切な取り組み。理系の学生などを対象に、将来働く場としての企業や研究機関への訪問見学会も定期的に実施している。
 924日には、つくば市にある国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の訪問ツアーを開催。農学部の学生たちが参加した。

 農研機構は、農業と食品産業の発展にかかわる研究開発を行っている機関。全国に拠点があり、約3,300人が働いている。そのうち約1,840人が研究職だ。

 今回ツアーに参加した学生は、農学部13年の計13人。いずれも女性だ。水戸キャンパスからのバスに乗りこんだ地域総合農学科1年の荷見円さんは、「将来の仕事について迷っている中のひとつに研究職があるので参加してみました」と参加動機を語ってくれた。

 つくばの学園大通りから見える農研機構の敷地の広大さに驚いているうちに、バスは正面ゲートをくぐり、「食と農の科学館」と書かれた建物の前のロータリーに停車した。この科学館は一般開放されており、ロビーには来場者の姿がちらほら見えた。

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 館内のオリエンテーションルームに案内されると、最初に農研機構の概要説明を受けた。「Society5.0に向けて、私たちは育種、生産、加工・流通、消費というフードチェーンのすべてのプロセスをAIでスマート化していくことに取り組んでいます」と教えてくださったのは、高木英典広報課長。高木さんによれば、去年4月に就任した久間和生理事長は同機構初の民間出身理事長ということで、産業界との連携もますます加速しそうな勢いだ。

 続いては、農研機構のダイバーシティ推進室の加藤晶子室長。研究の専門は育種だそうだが、今は女性活躍の促進や業務と家庭生活との両立支援といった同室の業務に専念している。昨年度からは一時預かり保育室の運営も始まり、同機構が契約している会社からのベビーシッターの派遣の利用料金の一部を助成する仕組みもあるそう。こうした積極的な取り組みにより、同機構の研究者全体に占める女性研究者の割合は今年3月時点で20.2%となっており、これは全国平均より高い数値だ。おととし1月には、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」という国の認証システムで最高位の3段階も取得した。

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女性が働きやすい職場づくりについて説明する加藤ダイバーシティ推進室長

 女性研究者が働きやすい仕組みとして、柔軟な裁量労働制も挙げられる。自分の研究や仕事に応じて、自由に勤務時間を調整できる制度だ。農研機構ではコアタイムや勤務時間の最低基準もないため、実験などの研究手法の事情だけでなく、家庭の状況も勘案しながら柔軟に働くことができる。

 茨城大学農学部・大学院農学研究科の出身者として、今回学生たちの前で自身の研究生活を紹介してくださった森山英樹上級研究員も、裁量労働制を活用しているひとり。
 森山さんの専門は、ビニルハウスなどの農業施設の気象災害対策に関する研究。地震や台風などの災害に強い構造を計算や実験によって調べ、生産者に提案する。もちろん災害の現場もいち早く訪れて調査を行いながら、積極的に相談にも応じる。「海外製のハウスの中には耐震構造が充分ではないものもあったりします。設置コストが高すぎれば当然導入できませんが、安いものはすぐ壊れてしまいます。そうした中で、最適なパイプの太さや大きさを求め、無駄なお金をかけずに済む合理的な設計をしています」という森山さん。機構内には大きな風洞実験設備もあるため、モデルを作っては実験する、という作業を繰り返す。それらを農家の方々に説明する際、専門用語や数式ばかり使っていては伝わらないため、アニメーションなども駆使するそう。「現場あっての研究。社会に貢献したい」という言葉どおり、現場の生産者とのコミュニケーションを丁寧に重ねている。
 そんな全国を奔走する森山さんだが、家庭では料理などの家事全般をこなしている。「裁量労働制なので妻より自分のほうが時間の融通がきくんですよ」と語っていた。

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森山上級研究員は茨城大学農学部の卒業生だ

 後半は、加藤さん、森山さんを囲んでの懇談。気さくなお二人を前に、最初は緊張気味だった学生たちもすぐに表情がほころび、気になっていることをどんどん質問していく。
 農研機構のホームページの採用情報を事前に確認したという学生は、「転勤が結構あると書いてありました。実際多いのでしょうか」と質問。ほかの学生たちも頷いており、やはり転勤の有無は気になるようだ。加藤さんは「転勤は基本的にあると思ってください」と回答。「長さは部署や専門によってまちまちですが、ひとつの組織でだいたい10年弱ぐらいというのが多いですね。いろいろな職場を経験しながら成長していきます」とのことだ。

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 また、「農研機構に入るためには、大学院まで修了している必要がありますか」という質問も。答えはNOだ。学部卒の人も積極的に採用しており、自分の研究に取り組む中で学位をとっていく研究者も少なくない。「この先どうやって研究し、ドクターをとっていくかということ自体も仕事のテーマになっています」と加藤さん。「そのためにも、大学のうちに、自分の研究を進めるための段取りを身につけておくことは大事なことですね」とアドバイスをくださった。

 懇談は予想以上に盛り上がり、あっという間に時間終了。最後に全員で記念撮影をし、機構を後にした。
 参加者のひとり、農学部地域総合農学科1年の高瀬ゆうのさんは、「研究職というのは休みなくずっと仕事をしていて、働きづらいところがあるのではと思っていましたが、働きやすい制度がたくさんあることを具体的に知ることができて、この仕事に就きたいという意欲が高まりました」と感想を語ってくれた。

 農研機構の皆様、ありがとうございました。

(取材・構成:茨城大学広報室)