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茨城大学が管理する電波望遠鏡をアジアの研究者たちが見学―連携して宇宙の謎を探れ!

 常磐高速道で日立市から高萩市へと北上していくと、眼下に2台のパラボラアンテナを見下ろせるポイントに出くわす。口径32メートルという大きさのこの2台のパラボラアンテナの正体は、茨城大学が管理・運用している電波望遠鏡だ。925日、アジアを中心とした11の国・地域から約70人の研究者たちがこの望遠鏡を見学に訪れた。「第12回東アジアVLBIワークショップ」で来日・来県した一行だ。

 茨城大学では、国立天文台が所有する2台の電波望遠鏡を管理・運営している。ほぼ隣接しているが、1台は高萩市に、もう1台は日立市に建てられている。もともとKDDIの衛星通信用アンテナだったものを改造してつくったものだ。

 

 電波望遠鏡は、天体が発する電波を受信する装置。光を受け取る光学望遠鏡に対して、電波は宇宙空間上の塵芥や雲霧などに邪魔されずに地球にやってくるため、遠い距離の天体もより精密に観測できる。パラボラアンテナの口径が大きければ大きいほど解像度が高くなるが、遠く離れた複数の電波望遠鏡を同時に動かせば、その距離の長さの口径の電波望遠鏡と同じ機能を果たすことができる点も特徴だ。

 「東アジアVLBIワークショップ」の「VLBI」というのは「Very Long Baseline Interferometry」の略で、日本語でいうと「超長基線電波干渉計」。そう書くと難しいが、前述のように複数の電波望遠鏡の観測データを合成してひとつの観測データとして扱う手法のことだ。今年春には、8つの電波望遠鏡を使ってブラックホールの画像の撮影に成功したことも発表され、大きな話題となった。このVLBIによる観測をスムーズに行うための国・地域を結んだ広域のネットワークが北米やヨーロッパなど世界にいくつか存在するが、日本・中国・韓国・台湾を中心とする「東アジアVLBIネットワーク」もそのひとつだ。二台の電波望遠鏡の運用を行っている茨城大学も、国内の国立天文台と6つの大学とともに参加している。そして、年1回開かれている関係者会合である「東アジアVLBIワークショップ」が、今年は茨城大学で開催された。今年が第12回で、日本で開催されるのは3回目、茨城大学では初めてのことだ。

 ワークショップには、日本・中国・韓国・台湾のほか、東南アジアやオセアニアなどからも参加者があり、その数は約100人に及んだ。研究発表では今後のブラックホールの観測の展望なども話し合われた。そしてそのエクスカーション企画として、高萩市・日立市にまたがる地域に立つ電波望遠鏡の見学も行われたのだ。

 一行はヘルメットを手渡され、アンテナの中央部へと階段・梯子を上がっていく。回転の機構や制御システムなどについて説明を受け、写真を撮影している研究者も多かった。

 特に熱心な視線を向けていたのが、東南アジアのタイやマレーシアから参加していた研究者たちだ。実はそれらの地域でも現在、電波望遠鏡の建設や、別用途でつくられたパラボラアンテナの改造などが進められている。これらの地域に電波望遠鏡ができることは、電波天文学を研究しながらも自前の望遠鏡をもっていなかった各地域の研究者にとっては言うまでもないことだが、VLBIにとっても強力な観測網ができることを示しており、大きな意義のあることだ。オーストラリアも加えて、アジア・オセアニアに広がるネットワークが具体的に展望される。

 そして中国や韓国も、電波望遠鏡のグレードアップを急速に進めている。これにより、近年、東アジア各地域の機関が協力して、共同利用のためのネットワークが誕生した。もちろんこれまで個別の協力関係があったが、共同利用のネットワークができることで、必要な観測がスムーズかつ体系的にできるようになる。条件整備が完了した電波望遠鏡から共同利用を始めており、茨城大学が管理する2台の電波望遠鏡は現時点ではまだ準備中だが、来年から正式に参加することが今回のワークショップ内の所長会議で承認された。

 ネットワークの拡大により、観測の精度がどの程度高まると考えられるか。ブラックホールの例で見てみよう。

 先般アメリカのチームが撮影に成功したのは、M87という銀河にあるブラックホールだ。今後このブラックホールをより精密な形で観測することが重要になるが、そのターゲットのひとつが、ブラックホールが吸い込めきれず、その外に気流のような形で発している「ジェット」という現象だ。

 こちらの図は、日本と韓国の7つの望遠鏡を使った、現行の共同利用ネットワークによる観測結果だ。ここには高萩市・日立市の電波望遠鏡は含まれていない。斜めに伸びているのがM87のブラックホールのジェットで、途中が切れていることがわかる。また、周囲に小さな渦状の模様も見えるが、これらはノイズのようだ。

 では、高萩市・日立市の電波望遠鏡も含む10の望遠鏡による観測結果はどうだろう。それがこちらの図だ。

 ジェットの形状が途切れず、つながって見えることがわかる。7つの望遠鏡では見えなかったところにも、ガスの存在が確認されたのだ。また、ノイズが排除されていることもわかる。

 東アジアVLBIネットワークの発展によって、今後、ブラックホールや宇宙の成り立ちについての新たな発見や成果が生まれることが期待される。茨城大学の電波望遠鏡の役割もますます重要なものになりそうだ。

(取材・構成:茨城大学広報室)