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中性子構造解析として最大の格子体積を持つタンパク質の解析に成功

 茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの山田 太郎 産学官連携准教授らの研究グループは、大強度陽子加速器施設J-PARC(茨城県東海村)内の茨城県生命物質構造解析装置iBIXを使用して、中性子ビームによって構造決定されたタンパク質の中で最大の結晶格子(結晶の繰り返し単位構造)を持つ、高度好熱菌由来のマンガンカタラーゼの結晶構造解析に成功しました。

 タンパク質の反応の仕組みの解明には、反応に関与する水素・プロトンの観測が重要であり、この観測を行うには、中性子構造解析は非常に効果的な手法です。

 一般に結晶格子の体積が大きくなると、結晶からの回折点の数が増えて重なりを生じることや、測定する結晶に含まれる結晶格子の数が減り、回折強度が小さくなることで、精度よくデータを得ることが困難になります。特に中性子ビームはX線に比べると強度が小さいため難易度が高くなります。今回、茨城県生命物質構造解析装置iBIXでは、専用に開発した中性子検出器を使用して得られた回折データを積分する新たなソフトウェアの開発により、3辺が各々133 Å (= 13.3 nm)の結晶格子を持つタンパク質結晶の中性子構造解析に成功し、タンパク質中の水素原子を明瞭に観測しました。この結晶格子の体積は、中性子を使ってこれまでに報告された150あまりあるタンパク質の構造解析例の中で最大です。結晶格子の体積はタンパク質分子の大きさにも関係するため、従来よりも大きなタンパク質でも水素原子を観測できることにつながります。

 また、今回のタンパク質の中性子測定では、10日以上の測定時間が必要でしたが、J-PARCの出力が将来的に予定の1 MWに達した場合、測定時間を2日程度に短縮できることもわかりました。

 本研究結果は格子長やビーム強度の制限のため従来の中性子回折計では測定が不可能であったタンパク質の中性子結晶構造解析の可能性を大きく広げるものです。今後、より多くの種類の酵素の反応に関わる水素原子の役割の解明や重要なタンパク質複合体の相互作用における水素原子の観測などの基礎研究を通じて、産業用酵素開発や医薬品設計などに貢献することが期待されます。

 本成果は、2019年8月23日に国際結晶学連合IUCrが発行するJournal of Applied Crystallographyにオンライン掲載されます。

 くわしくはプレスリリースをご覧ください。
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