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演劇研究会夏公演「僕たちの好きだった革命」―演出の山下さん語る、上演に込めた想い

 816日、水戸芸術館で開かれる第51回水戸市芸術祭演劇フェスティバルにおいて、茨城大学演劇研究会(演研)による「僕たちの好きだった革命」という作品が上演される。かつての学生運動の空気に触れることになった高校生たちを描いた、劇作家・鴻上尚史脚本の芝居だ。2019年の今、演研はなぜこの作品を選んだのか。また、学生運動や登場人物の行動についてどのように感じるのだろうか。演出担当の山下真礼さん(理学部2年)に聞いた。

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 学生運動盛んな1969年、高校生たちと機動隊の衝突の中で負傷した山崎義孝は、昏睡状態に陥った。ところが30年後の1999年に突然目を醒まし、47歳となった山崎は再び高校へと通うことになる。学校の管理が強まり、生徒たちも冷めた雰囲気を醸し出している1999年の教室で、山崎による「シュプレヒコール」「アジビラ」「クラス討論」といった聞きなれない発言や振る舞いに、小野未来や日比野篤志らクラスメイトたちは戸惑いを覚えるが、文化祭の準備が進む中で状況が大きく変わっていく―

―どうしてこの作品を選んだのですか?

「私がこの作品を初めて観たのが、演劇を始めた中学1年生のときだったんですけど、そのときに感じたエネルギーがすごくて。その後も、自分が辛いときに登場人物の言葉に支えてもらっていたという作品なので、それを自分が表現したいな、演劇にしたいな、と思っていたんです」

theatre3.jpg演出を担当する山下真礼さん

 山下さんにとっては、今回が人生で初めての本格的な演出。その門出となる本作品は、登場人物が多く、2時間で46シーンというから、場面転換の数も半端ではない。

「夏公演をこの作品にすることに決めたのが31日だったんですけど、その時点では部員が足りなくて。必死で1年生を勧誘しました。ビラ配りの日数も増やして。そしたら去年の2倍も部員が入ってくれたんです。
 とはいえ、こんな大人数の舞台で、先輩方も誰もやったことがない作品だったので、私自身がどこを見ていいのかわからなくなってしまうことが何度もありました。その中で、どの人物をお客さんに見せたいか、それを見せるかということを考えてきました」

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 とはいえ、今の10代~20代の学生にとって、学園紛争は馴染みがない時代の話。当時の雰囲気を知るために記録映像の鑑賞会も行ったそう。そのときの感想について、山下さんは、「1960年の学生運動の映像は結構過激で衝撃だったんですけど、ここまで行動に移してしまうのはどうなんだろう...」と率直に振り返りつつ、その「信念」には共感を覚えたようだ。

「手段は別としても、自分の中で信念をもって行動しているというのは、すごくかっこいいことだなと思いますね。学生運動というと当時は大学生が中心ですけど、この作品の人物たちは高校生で、過激な学生運動そのものがメインというより、自分の目的を貫くというのが軸かな、と思っています。自分としてはそういうところを表現したいな、と」

―「シュプレヒコール!」と叫ぶ山崎君が今みなさんの周りに現れたらどうでしょう?

「たぶん引いてしまうと思います(笑)でも、演研の先輩方は演劇に対してまっすぐな方が多くて、そういうところは山崎君とかぶるところがあるな、と思います。私自身、演出で迷ったりするときに、山崎君の『自分の信じるものを信じればいいんだよ』という言葉に救われているところがあります。
 私はもともと小野未来ちゃんの役をやりたいと思っていたんです。最初はのほほんと生きていた生徒が、山崎君に出会うことによって自分の中に芯が生まれてくるのがかっこいいなと思って。自分自身も未来ちゃんみたいにまっすぐ進んでいけるように変わっていければなと思っているところがあるんですよ」

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―その点では、今の若い人たちは「冷めている」ということもよく言われますけど、どう思いますか?

「そうですね、冷めているというのはあるのかな...。今回の舞台でも、1999年の記録を読んだ2019年の女子生徒が『ちょっと痛いカンジですね』みたいに言うセリフがありますけど、そういう雰囲気が今あるとは思います。
 逆に演劇をやっている人は熱い人が多くて、その意味ではやっている人とやっていない人の温度差をたまに感じますね。芝居観て『あー、痛かったわ』という人も実際いますし」

―熱さに「痛い」と感じる人にこそ、今回の芝居は観てもらえるといいですよね。

「『痛い』と思わせてしまう舞台には、それなりの原因があるということですから、そうならないように意識しないと。ところどころ笑いを入れますし、劇中のラップも、硬い話をやわらかくしてお客さんが飲み込みやすいようにする仕掛けといえます」

 確かにこの作品の中ではラップが重要な役割を果たす。語り手となる小野未来やその友人である希は、文化祭のクラス企画として人気ラッパー「タイト・キック」のヒップホップライブを開くことを提案したが、学校側から却下されてしまう。その決定への抵抗が、山崎との出会いの中で増幅していくのだ。タイト・キックによるラップと、意外にもそれにシンクロする山崎のアジ演説が重なる部分は印象的な場面のひとつだ。

theatre6.jpgのサムネイル画像「山崎君」(左)の演説と「タイト・キック」(右)のラップがシンクロする

―ラップは難しかったのでは?

「すごく難しかったです。誰もラップはやったことがなかったですし。でも、水戸でラップをやっていて演劇もよく観ていらっしゃる方がいて、その方に指導をしてもらっています。ラップの詞も今回用に書き換えていただいて」

 取材した日もラップの指導を受けていたが、「山崎君」も「タイト・キック」も、「だいぶうまくなりましたね」と褒められていた。その強いグルーヴは、カメラを抱えて稽古を見学していた取材者にも伝わってきた。

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―最後に、この作品で感じてもらいたいことは?

「この話は小道具で古いものが出てきたりして、流行りのものはどんどん変わっていくんですけど、一方で自分の中にある情熱とか人間がもっているエネルギーは、何年経っても変わらない。そういうことを見せられたらな、と思っています。暑い夏にぴったりな熱いお芝居なのでぜひ観に来てください!」

公演情報

水戸市市制施行130周年記念第51回水戸市芸術祭演劇フェスティバル
茨城大学演劇研究会2019年度夏公演

「僕たちの好きだった革命」

  • 脚本:鴻本尚史 潤色・演出:山下真礼
  • 日時:2019年8月16日(金)18:30開演(20分前開場) ※1公演のみ
  • 会場:水戸芸術館ACM劇場(水戸市五軒町1-6-8)
  • 料金:一般1,000円、大学生以下800円(全席自由)
  • お問い合わせ:
    特設サイト https://cucumber-kyuri.net/revolution/
    Twitter @enken_i