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「SDGs達成に向けた地域・大学のアクションを考える」
茨城大・常磐大・茨城キリスト教大の学長が語る

 2030年までに世界が達成すべき17の目標をまとめた国連のSDGs(持続可能な開発目標)。多様なパートナーシップによる達成が目指される中、大学もその重要なプレイヤーとしての役割が期待されています。
 725日(木)、茨城大学・常磐大学・茨城キリスト教大学の3大学は、「SDGs達成に向けた地域・大学のアクションを考える」という講演会を共催で開催しました。会場にはSDGsに関心をもつ学生や地域住民など100人以上がかけつけ、各大学のキャンパスにも動画で中継されました。三大学長は何を語ったのでしょうか。

 講演会ではまず、前国連地域開発センター所長の高瀬千賀子さんが、SDGsがつくられた背景や経緯を紹介。

持続可能な開発の概念は、1987年の開発と環境に関する世界委員会(ブルントラント委員会)で「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」として提唱された後、リオ地球サミット(1992年)で持続可能な開発を実施する行動計画が採択されました。持続可能な開発のフォローのために持続可能な開発委員会が設置され、節目の年では地球サミット+5(1997年)、ヨハネスブルグサミット(2002年)などで継続的に議論がなされました。

 2000年の国連ミレニアム・サミットではミレニアム宣言が採択されましたが、それを基に、主に貧困撲滅を主題に20002015年までの「ミレニアム開発目標(MDGs)」が作成され、その達成に向かって努力が集中しました。 2012年に開かれた国連持続可能な開発会議(リオ+20)においては、世界各国に通用し、市民を取り込む行動主体の目標をつくることが合意され、2014年に「持続可能な開発目標(SDGs)」が合意されました。これを受けて、2015年の国連持続可能な開発サミットでSDGsを含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が2030年までの開発課題として策定されました。

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 高瀬さんは「誰ひとり取り残さない」というSDGsの意義を強調した上で、「若い皆さんには、自分の消費や生活を通して、貧困の撲滅や持続可能な開発の達成といったことに主導的に関われるということを、ぜひ意識してほしいです。あなた方の行動が将来を左右するのです」と呼びかけました。

 その後は、茨城大学の三村信男学長、常磐大学の富田敬子学長、茨城キリスト教大学の東海林宏司学長がそれぞれの大学の取り組みを報告しました。

 茨城大学の三村学長は、地球環境工学の専門家として、ノーベル平和賞を受賞した国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書の主執筆者を務めたこともあります。そうした経験も踏まえ、まずは世界で顕在化する気候変動の影響の深刻さに触れ、「これまでにない豪雨や土砂災害という形で、私たちの地域にも大きな影響が出ている。それらにしっかり対処していくことが、持続可能な社会づくりの基盤となる」と述べた上で、今年4月に茨城大学内に茨城県地域気候変動適応センターを開設したことなどを紹介しました。

 続いて、そうした複雑な社会課題に応えていくためには、これまでの講義一辺倒の教育を見直す必要があるとし、主体的・能動的学習への転換を進める教育改革の取り組みを報告しました。

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 その上で三村学長は、「SDGsが問いかける生活基盤の充足、健全な経済成長、環境と資源の保全、平和と公正・平等、パートナーシップといった視点は、日本が世界に先がけて直面している人口減少、長寿社会の課題に直結している。SDGsの達成は地方創生に密接にリンクしており、大学は自治体や団体、住民をつなぐプラットフォームとして手を携えていくことがますます重要だ」と述べました。

 続いて登壇した常磐大学の富田敬子学長は、長く国連に勤めたあと、今年4月に同大の学長に就任。冒頭、「常磐大学の建学の精神は『実学を重んじ真摯な態度を身につけた人間を育てる』。実学とは社会が直面するさまざまな問題に解決を示すことができる学問であり、まさにSDGs推進に寄与するものです」と述べたあと、同大におけるSDGsに関連する教育研究を「ときわアクション」としてピックアップして紹介しました。このうち、防災や環境の分野では、「ときわBosaiワークショップ」や、同大キャンパス内のエコシステムの見直しなどに取り組んでいることを報告。「茨城県は東日本大震災などの負の経験をしたが、そこからの復旧・復興の姿を、同じく災害への対応がますます急務となる世界の各地域へと発信していくべき」と語りました。

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 その上で、「大学も地域社会もSDGs達成のための重要なアクター。『地域で学び、地域で生きてゆく』ことの価値を伝達していくとともに、大学として、地域のステークホルダーとともに持続可能な茨城のグランドデザインを描き、提案していく責任があるのではないか」と話し、協力を呼びかけました。

 最後は茨城キリスト教大学の東海林宏司学長。2014年に学長に就任したとき、東海林学長は、「つながる大学であり続ける」という目標を掲げたそうです。その後、学園の創立70周年に伴い設定された「Peace(平和)Truth(真理)LOVE(愛)」というスクールモットーに基づき、さまざまな取り組みを進めています。

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 たとえば東海林学長自身が担当する1年生の演習科目では、学生たちの発表テーマの中にもSDGsと関連づけることが可能なテーマを見出せるのこと。食物健康科学科のある学生は、日本の食糧自給率を調査したところ、日本としては低い一方で、茨城県の自給率はきわめて高いことを発見しました。「学生たちに教えてもらうことも多い。茨城県は農業県。就農者の高齢化対策や6次産業化などの農業の課題に答えていくことが、SDGs達成と地域づくりの両方につながる」と指摘しました。また、日立市との連携で進めている「学生プロジェクト」でも、学生たちが社会貢献を通じてSDGs達成へとつながるアクションに取り組んでいる様子が紹介されました。

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 講演会の後半では、高瀬さんのモデーレートのもと、3人の学長が鼎談。「茨城という地域との関係」「必要な人材」「大学から提案していけること」といった視点で、それぞれの見解が語られました。

 このうち、地域課題との関係について、人口問題を専門とする常磐大学の富田学長は、「少子高齢化とともに、外国人人口の流入も考えていかなければならない。茨城県は人口の2.2%64000人が外国人。多文化共生社会をどう実現するかが重要になる」と指摘。また、茨城キリスト教大学の東海林学長は、これからの人材育成に関して、「未来の人をつくる教員養成も重要な課題。教員になりたいという人が少なくなっている中、学校現場の働き方改革について大学もコミットしていく必要がある」と述べると、茨城大学の三村学長も強く同意し、三大学連携による教員養成強化の取り組みが紹介されました。

 あわせて三村学長は、社会人のリカレント教育についても言及。茨城大学のリカレント教育プログラムにおいては、社員を送り出す企業からは、意外にも哲学や環境といった教養教育への関心が高いことを紹介し、「10代~20代の若者だけに留まらない、広い世代に対する教育の機会を考えることが大事だ」と話しました。これについて富田学長が「ジェンダーの視点からも取り組むべき問題。子育てが一段落したあと母校に戻って学び、また社会で活躍できるようになれば」と応じると、三村学長は賛同し、「ひとつの大学でオファーできる科目は限られる。今後、大学間で連携していければ可能性はさらに広がる」と語りました。

 モデレーターを務めた高瀬さんは、「『みんなでやっていく』というのがSDGsのコンセプト。茨城のアクションプランを、ぜひ作っていってほしい」と期待を込めました。

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 その後の質疑応答では、中継先の常磐大学、茨城キリスト教大学の会場にいる学生たちから、SDGsについて学べる具体的なプログラムについて質問があり、各学長とも、それらの機会を積極的につくり、示していくことを約束しました。

 また、高校生の女性が、「以前はSDGsは国連のものというイメージが強かったが、今回の話で身近なものに感じられた。身の回りでもできることがあるとわかったので、これからはSDGsのどの目標に当てはまるか考えながら積極的に行動したい」と感想を述べると、会場から拍手が送られました。

 今回の連携講演会は、SDGsという切り口を通して、各大学の取り組みや連携事業の可能性を見直す機会となりました。地域を拠点としたSDGs達成に寄与するため、今後も大学間での連携を強化していきます。