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理工学研究科修了生・米谷拓朗さんら、太陽の偏光観測によりフレアカーネルの磁場ベクトルを推定―学術誌に修士論文の成果掲載

 2017年3月に大学院理工学研究科博士前期課程を修了した米谷拓朗さんが観測した太陽偏光分光解析の投稿論文が、日本天文学会刊行の欧文研究報告誌である"Publications of the Astronomical Society of Japan"に掲載されました。2018年12月に出版されたこの論文は、9ページにおよぶ本格的な論文です。

 この研究は、2015 年 8 月 9 日に発生したCクラスフレアのフレアカーネルに伴う HeI 1083 nm の輝線とその偏光を、京都大学飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡を用いて、米谷さんが中心になって偏光分光観測した解析です。偏光メカニズムとしてゼーマン効果とパッシェン=バック効果に加え、大気モデルとして1つの吸収成分、2つの速度の違った輝線成分を考慮することで、世界で初めてフレアカーネルの HeI 1083 nm 偏光スペクトルから磁場ベクトルを導出しました。その結果、2つの輝線成分は磁場の方向、強度 (1380 G) ともに、同時に測定された光球の磁場ベクトルと同様の値を持つことが明らかになりました。フレアによって生成された非熱的高エネルギー電子が彩層に突入し、彩層の低層部で散逸することで、高温プラズマが彩層の低層部に形成され、高温プラズマの周囲で衝突や放射による中性 He の励起が起こり、HeI 1083nm の輝線が彩層低層部から放射されたと解釈しました。さらに HeI 1083 nm の輝線が放射された大気層の密度と非熱的電子エネルギー分布のべき指数を仮定し、見積もられた非熱的電子エネルギー分布の低エネルギー側のカットオフ 20-30 keV は、観測された硬 X 線スペクトルから見積もられた値と一致しました。

 この論文は、米谷さんの博士前期課程の修士論文の一部を論文化したものです。論文は、Oxford AcademicのWebサイトで閲覧・ダウンロード(有料)できます。

黒点領域に発生したフレアとフレアに伴うHeⅠ1083 nm輝線スペクトル 左はHα太陽像、右4つの図はスリットにおける偏光分光データ 黒点領域に発生したフレアとフレアに伴うHeⅠ1083 nm輝線スペクトル
左はHα太陽像、右4つの図はスリットにおける偏光分光データ

測定された磁場ベクトルの解釈図 測定された磁場ベクトルの解釈図

論文情報

  • 論文タイトル:Measurement of Vector Magnetic Field in a Flare kernel with a Spectropolarimetric Observation in He I 10830 A
  • 著者:Tetsu Anan Takurou Yoneya Kiyoshi Ichimoto Satoru UeNo Daikou Shiota Satoshi Nozawa Shinsuke Takasao Tomoko Kawate
  • 雑誌名:Publications of the Astronomical Society of Japan, Volume 70, Issue 6, 1 December 2018, 101
  • https://doi.org/10.1093/pasj/psy105.
  • 発行:2018年12月1日

米谷拓朗 さんのコメント

この度、私の研究成果がPASJ(Publications of the Astronomical Society of Japan)に掲載されたことを大変嬉しく思います。これも阿南徹さんをはじめ、共同研究者の方々のお力が非常に大きいと考えております。共同研究者の方々には深く感謝申し上げます。本研究で推定したフレアカーネルの磁場ベクトルおよびカットオフエネルギーの物理量は太陽フレアの物理的解釈に役立つと考えております。本研究成果が太陽物理学の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

理学部 野澤 恵 准教授のコメント

米谷君が学部と修士時代に取り組んできた研究が実り、論文として掲載されたことは指導教員として非常に光栄なことです。小規模なフレアですが、幸運にも米谷君が偏光観測を直接行い、フレアカーネルの磁場ベクトルを導出した最初の論文になります。米谷君が納得できるまで、昼夜を忘れに修論研究に没頭したことを昨日のように思い出します。そして米谷君の修論を共同研究者の阿南徹さんが、投稿用に入念に手直しを行い、出版までの運びになったことをうれしく思います。この研究は、茨城大学独自の太陽観測システムの構築だけでなく、日本や世界の太陽の研究分野にインパクトを与えるものと考えています。

(2019年3月22日)