1. ホーム
  2. NEWS
  3. 60代で大学院に入った仲根聰子さん―ガウディに導かれスペインと笠間をつなぐ

60代で大学院に入った仲根聰子さん―ガウディに導かれスペインと笠間をつなぐ

 笠間とスペインの交流をまちづくりのきっかけに――大学院理工学研究科博士後期課程に所属する仲根聰子さんがそんな思いを結実させ、スペインのバルセロナ大学で笠間焼の展覧会を開催することになった。仲根さんは60代で茨城大学大学院の人文科学研究科(当時)に入り、世界遺産サグラダ・ファミリアの建築現場でのフィールド研究に取り組み、2017年から理工学研究科の博士後期課程でドクターの取得を目指している。経緯などについて話を聞いた。(聞き手:茨城大学広報室)

gaudi1.jpg

――大学院に入ったきっかけは?

仲根「定年まで特別支援学校の教員をしていたのですが、当時から世界のいろんな地域を旅するのが好きで、特にスペインの建築家・ガウディの思想やものづくりに感銘を受けました。世界遺産にも登録されているサグラダ・ファミリアは、着工から100年以上経った今も建設が進められているのですが、そこで働く人たちはどんな思いをもっているのか、どういう形でガウディの精神が受け継がれているのか、ということに興味があり、一念発起して茨城大学の大学院(人文科学研究科)に入り、研究を始めたんです」

――何度もスペインに行かれたんですね。

仲根「はい、50回近く行きました。サグラダ・ファミリアで働く職人や、ガウディの研究者など、いろんな方たちにインタビューをしました。サグラダ・ファミリアの専任彫刻家を務めている外尾悦郎さんや、ガウディ研究者の田中裕也さんなど、スペインで活躍する日本人の方々とも交流が生まれました」

――人文科学研究科を2013年3月に修了して、2017年からは大学院理工学研究科の博士後期課程に入りました。

仲根「修士課程でできなかったことに取り組み、自分の中で納得できるものに仕上げたいと思って、山田稔先生(交通工学)の研究室に入り、多くの先生方にも支えていただきながら研究を進めています。
 修士課程でガウディのものづくりや精神性に触れたわけですが、それが茨城の笠間焼の自由な作風と共通するように感じて、この共通点を活かした笠間のまちづくりを研究テーマにしています」

gaudi2.jpg世界遺産サグラダ・ファミリア

――笠間焼とガウディという比較は意外ですね。具体的にどんな点が共通しているのでしょうか?

仲根「ガウディのユニークな点のひとつは、ある程度の決まりを作ったうえで、あとはその中で弟子や職人に自由に作らせるという建築方法です。一方笠間焼も、かつては決まった笠間の土を使って生活雑器を作っていたのが、第二次世界大戦のあとになると、ひとりひとり独立した作風をもつようになります。現在200人ぐらいの作家がいますが、作風はみんな個性的ですごく違う。笠間の土を使う人はごくわずかで、色も形も自由。そういう作風と、ガウディの自由さに共通する精神性を感じています」

――そのような共通点を、どのようにまちづくりに活かすのでしょうか。

仲根「ガウディ研究者の田中裕也さんをスペインから招き、ガウディについての講演会を笠間で開いたんですね。そしたら笠間焼の作家が5人ぐらい参加してくれて、ガウディの作品や思想にすごく感激し、『ぜひバルセロナで作品を紹介してほしい』と言ってくれたんです。また、作家以外でも、たとえば農業をやっているような方も、ガウディの話をするようになって、『仲根さん、もっとガウディの講演会やってね』と声かけられるようにもなりました。そういうふうにして笠間にガウディへの興味が広がり、文化交流につながればと思っています」

 「ガウディ」というシンボルを経由することで、笠間焼の自由さを、まちの人たちのアイデンティティにつなげ、地域文化を豊かにし、笠間焼に活路を見出すという狙いが、仲根さんの進める交流の根底にある。笠間での講演会開催のあと、今度はスペインでイベントを行うことになる。

仲根「スペインで笠間焼を紹介する展覧会を、今年(2018年)5月に、バルセロナのガウディ博物館で開きました。ここでは、東洋の焼き物を見たり触ったりしたことのない人たちが、とても感動して、「土っぽい香りがするね」と言ったりとか、カップなどの唇に当たる部分の繊細な造形など、高い技術に驚いたりしていました。日本に帰ってきて笠間焼の作家に伝えると、自分たちも意識していなかった点がそういうふうに認められたことに、とても喜んでいました」

gaudi3.jpg

5月にガウディ博物館の一角で初めて笠間焼を展示 題字はご主人が揮毫

――そして11月に2回目の開催となります。今回はバルセロナ大学での展示。協力者もだんだん増えてきたようですね。

仲根「5月にやったときは、移動費などはもちろん自費ですし、持っていく笠間焼の作品もすべて自分で買い上げたんです。でも2回目を開くにあたっては、スペインで笠間焼を紹介することの意義を作家のみなさんも理解してくださって、たくさんの人たちが作品を無料で提供してくれました。さらに今回は、作家さんもひとり同行することになりました」

――日本とスペインの外交関係樹立150周年の事業にも位置づけられているんですね。

仲根「そうなんです。企画公募があって応募したら、採択していただきました。開催にあたっては茨城県や笠間市など自治体の支援も得られればと思ったのですが、無理でした。個人の活動というだけでは限界もあるので、今回、「いばらき・スペイン親善交流協会」という団体も立ち上げたんです。会長も自分で。それで多くの団体に後援・協賛という形でサポートしてもらえることになりそうです」

gaudi4.jpg笠間市長(左)のもとへも訪問した

――すごいエネルギーですね。そこまで仲根さんを突き動かす思いとは?

仲根「修士課程でガウディのすばらしさを学んで、それをドクターコースでは社会に還元したいなと、年齢的にもそのように思っています。笠間焼をガウディのふるさとに紹介するという私の小さな活動が、笠間のまちづくりにとっても、スペインで陶器を作っている人にとっても大きな文化交流につながればと願っています」

gaudi5.JPGインタビューに応える仲根さん(水戸市内にて)

gaudi6.jpg

バルセロナ大学での笠間焼展示会ではピアノのコンサートや講演会も催される

(企画・構成:茨城大学広報室、写真は一部を除き仲根さん提供)