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農学部・中平洋一准教授ら、葉緑体成立に不可欠なタンパク質輸送モーターを発見

 本学農学部の中平洋一准教授は、大阪大学・中井正人准教授らの研究グループ、京都府立大学・椎名隆教授らとの共同研究によって、植物葉緑体で機能する2千種類を超える様々なタンパク質を葉緑体内へと運び入れる新奇で巨大な蛋白質輸送モーター複合体を見出し、その全ての構成因子を決定することに世界で初めて成功しました。

 10億年以上前、内共生したシアノバクテリアから葉緑体が成立する過程においては、葉緑体の外で合成されるタンパク質を葉緑体内へと運び入れる分子メカニズムの確立が必要でした。研究グループは、2013年に、タンパク質を葉緑体に運び入れるために必須の新奇な輸送チャネル複合体を、葉緑体を包む膜に見出していましたが、このチャネルを通してATPの加水分解エネルギー依存的にタンパク質を引き込むための輸送モーターについては解明されていませんでした。

 今回、研究グループは、輸送チャネル複合体と協調的に働く分子装置を探索することにより、7つの異なるタンパク質分子から構成される、分子量およそ200万のまったく新奇で巨大な輸送モーター複合体の単離と同定に成功しました。その結果、元来、シアノバクテリアではタンパク質を分解する酵素として使われていた複合体が、葉緑体となる過程で、タンパク質を運び入れる装置へと変化して利用されてきたことが分かりました。葉緑体成立の謎がまたひとつ解明されたことになります。

 これにより、葉緑体が光合成などの機能を発揮するために必要とされるタンパク質をいかに運んでいるかの詳細な分子メカニズムの理解に大きく前進すると同時に、藻類や植物といった葉緑体を有する様々な光合成生物の進化の過程がさらに解明されていくことが期待されます。また、植物工場としての葉緑体へ、異種タンパク質を集積させる技術への応用展開も期待されます。
 本研究成果は、米国科学誌「The Plant Cell」オンライン版に、BREAKTHROUGH REPORT として10月12日に公開されました。

詳しくは資料(PDFファイル)をご覧ください。

【プレスリリース】世界初!葉緑体成立の謎を解明 ―タンパク質の分解係からタンパク質の運び屋に―

論文情報

  • タイトル:"A Ycf2-FtsHi heteromeric AAA-ATPase complex is required for chloroplast protein import"
  • 著者名:Shingo Kikuchi, Yukari Asakura, Midori Imai, Yoichi Nakahira, Yoshiko Kotani, Yasuyuki Hashiguchi, Yumi Nakai, Kazuaki Takafuji, Jocelyn Bédard, Yoshino Hirabayashi-Ishioka, Hitoshi Mori, Takashi Shiina, Masato Nakai*(*責任著者)

研究者らのコメント

 葉緑体のタンパク質輸送装置に関しては、10年以上前から提唱されている古いモデルが定着していました。われわれのグループでは、この定説に疑問を持ち、2013年に新奇なタンパク質輸送チャネルを発見しサイエンス誌に発表しています。今回報告する新奇な輸送モーターはそれに次ぐ発見であり、これらの発見により、教科書にも載っているような古い定説は覆され、モデルは大幅に書き換えられる事になると考えています。今回の論文発表においては、科学的根拠とは別のところで古い学説を信じている査読者を納得させる事に実に3年に及ぶ長い時間を費やしましたが、最後は実験データの正しさが認められたと思います。また、葉緑体ゲノムのycf1とycf2という遺伝子は長い間、葉緑体研究者の間で機能未知の謎の遺伝子として知られていましたが、われわれの2013年と今回の報告により、その実体が解明されたことになります。輸送チャネルと輸送モーターの鍵となるコンポーネントとして、葉緑体自身がycf1とycf2という2つの遺伝子を協調的に変化させながら進化してきたことに、私たちも大変驚きました。

(2018年10月16日)