CONTENTS新型コロナウイルス感染症の拡大防止に関する基礎知識
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止にあたっては、報道等でも周知のとおり、マスクの着用、手指消毒、密閉・密集・密接のいわゆる3つの「密」を避けることなどが呼びかけられています。あわせて、共用物品を通じた感染リスクもあり、それらの洗浄・消毒によってウイルスを除去・不活性化させることも重要です。
こうした対策についての理解を広げるため、茨城大学保健管理センター監修のもと、以下のような「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に関する基礎知識」という資料を作成しました。厚生労働省のホームページなどとあわせてぜひご参照ください。
COVID-19の感染サイクル
感染拡大防止方法
- A マスク:飛沫を出さない、吸引しない
- B 手指消毒:物品からの感染を防ぐ、物品を汚染させない
- C 3つの「密」(密閉、密集、密接)を避ける:飛沫の空間密度を下げる
- D 物品洗浄・消毒:物品上のウイルスを除去、不活化させる
ウイルスに対する生体防御について
- 1.ウイルスに感染しても発症するとは限らない。
- 2.症状がみられる場合を顕性感染(上図のケース1)、無症状で経過する場合を不顕性感染という(ケース2)。
- 3.顕性感染になるか、不顕性感染になるかは、そのウイルスに対する個人の抵抗力の強弱、免疫の有無、ウイルスの毒力の強さや量との関係で決まる。
- 4.ウイルスの侵入に対して、ヒトの体は「自然免疫」(NK細胞など、生来備わった防御システムで、あまり個人差はない)と「獲得免疫」(侵入したウイルスに特異的な抗体が作られてウイルスを駆逐する)で応答している。
- 5.獲得免疫が働くまでには約1週間("IgM"という抗体)かかり、その後も別な抗体("IgG")が"IgM"よりも多く作られる。獲得免疫は記憶されるので、2回目のウイルス侵入に対しては速やかに抗体が作られる(=予防接種、ワクチンの原理)。
新型コロナウイルス感染症に対する考え方
茨城県は単位人口当たりの医師数が全国で2番目に少ない県で、医療資源が豊富とは言えない県です。 "医療崩壊"を引き起こすことなく、新型コロナウイルス感染症を終息させるための基本的な行動は、皆さんの適切な 「衛生行動」の遵守です。それによって、感染拡大を遅らせ、適正なスピードで 「集団免疫」を拡大させることが出来ます。そのプロセスでは、「不顕性感染」について理解することも重要です。
衛生行動
衛生行動とは、感染しにくくするため、感染したときに周りになるべく広げないためにとる行動のことです(前項の(1)と(2)を理解のこと)。手洗い、咳エチケット、人の触ったもの(特にドアノブ、大学の教室であればマイクなど)にむやみに触らないことが、今回の新型コロナウイルス感染対策として有効な衛生行動であり、感染拡大を遅らせることにつながります。
集団免疫とは
集団免疫とは、特定の集団に属する個人が、ある程度の率で獲得免疫を得た際に生じる効果のことで、その集団の中で獲得免疫を得ていない人を間接的に保護します。集団の一定割合の人が免疫を獲得した段階で、集団免疫が成立します。今回のCOVID-19も、日本が集団免疫を獲得した段階で、日本での流行は終息に向かわせることができます。感染しないことを目指しているわけではなく、集団免疫を獲得して、基本再生算数(R0)注を1未満にすることを目指しています。
感染拡大を遅らせる意義
集団免疫を獲得するまでは感染は収まりません。感染者の数を縦軸、時間を横軸にとったグラフを書けば、どのようなパターンをとったとしても、(ワクチンや薬がなければ)カーブの積分値は同じ。すなわち爆発的な感染の方が、収束するまでの期間は短いのですが、ピークを低くすることで、医療崩壊が起こるのを防ぐ、遅らせる効果があります。医療崩壊が起こると、重症のCOVID-19患者だけでなく、一般の外傷治療や癌の治療に手が回らなくなり、これまでの医療水準であれば助かるはずだった患者が死亡することになります。また、ピークを遅らせることで、ワクチンや治療薬が間に合うことが期待されます。
不顕性感染
不顕性感染とは、感染しているけれど症状が出ていない感染のことです。新型コロナウイルス感染は、この不顕性感染の割合が高いのが特徴です。不顕性感染が起こる割合が多い感染症は、気づかないうちに広がるので、一般にいわゆる封じ込めによって終息させることは難しく、集団免疫を獲得することによっての終息を目指すことになります。一方で、不顕性感染が多い病気の方が、感染によって治療を受けなくても免疫を獲得していく人口が多いので有利とも言えます。
注 基本再生算数(R0):新規に感染症にかかった人が、免疫を持たない集団に入った場合、感染させることができる人数