Home Journal

教育学部OG・ジョンソン知亜紀さん(ヒューストン大学講師)が来日 教育学部で一日講師

インタビュー

 米国ヒューストン大学で日本語講師を務めるジョンソン知亜紀さんが、7月5日、母校である茨城大学を訪れ、太田副学長と意見交換したほか教育学部の君塚淳一教授の授業でゲスト講師を務めた。

ジョンソン先生、太田理事、君塚教授(左から)太田寛行副学長、ジョンソン知亜紀さん、君塚淳一教授

 ジョンソンさんは2001年度に本学の教育学部学校教育教員養成課程(英語専修)を卒業後、ジョージア州立大学大学院に進学。応用言語学を学ぶかたわら、Teaching Assistant(TA)制度を利用し、日本語の初級クラスを2コマ担当した。大学院卒業後はテキサスA&M大学等で客員講師を経験し、結婚や出産を経て現在はテキサス州立ヒューストン大学の日本語講師として教鞭をとる。 本学OGでもあるジョンソンさんに、日米の大学の違いや、学生時代に留学することの意義について話を聞いた。

ジョンソン先生

―アメリカで働くことになったきっかけは?

ジョンソン「大学で日本語を教えることになったのは、本当に偶然でした(笑)。留学した大学でたまたま日本語のティーチングアシスタントを募集していて、それに応募したのがきっかけです。中学時代、私を英語嫌いから救ってくれた恩師は、カナダ人のタミー先生。JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)を通して茨城県の小中学校で2年間英語のアシスタントを務めていらっしゃいました。彼女のように、自分の母語を海外で教える仕事に憧れがあったのは確かです」

―留学してみて驚いたことや困ったことは。

ジョンソン「英語力には自信があったけど、実際に飛び込んでみるとネイティブの英語はスピードが速いし、訛りがあったりして全然聞き取れず、最初のうちは会話についていけませんでした。一番ショックだったのは、マクドナルドでオレンジジュースの注文ができなかったことですね!ジュースの注文くらい、中学校で習う英語でもできると思うじゃないですか。でもレジで注文したら、店員さんから怒られたんです。何を言われているのか理解できなくて、結局ジュースはあきらめました。あのときは『私はマックで注文すらできないのか』と、自分の不甲斐なさに涙しました...」

―フィンランドで暮らしていたこともあるそうですね。

ジョンソン「出産・育児で休職している間、夫の仕事の都合でフィンランドに1年間住む機会がありました。フィンランドは、無料の語学講座や職業訓練など移民へのサポートが手厚くて、外国人でも『自分はよそ者じゃない、はじかれていない』と感じさせてくれる、住み心地の良い国でした。暗記中心ではない教育法で有名なフィンランド。小学4年生の英語の授業を見学しに行く機会を得たり、内戦の続くシリアやソマリア、アフリカの移民などとフィンランド語の授業で友達になったりと、充実した毎日を過ごしました。1年間フィンランドで暮らした後、やはり仕事の都合でテキサスに移ることになり、今に至ります」

―ヒューストン大学はどんな大学ですか?

ジョンソン「1927年に設立されたヒューストン大学は、4万5,000人を超える学生が学ぶ、テキサス州で3番目に大きな大学です。テキサスといえば保守的なイメージがあるけれど、ヒューストン大学は『全米で2番目に多様性のある大学』と言われているくらい、開かれた大学です。人種や国籍、年齢、学ぶ目的、LGBTなど、学生のバックグラウンドは驚くほど多様です。自分で学費を払いながら卒業する学生もたくさんいるため、フルタイムの学生であれば4年で卒業するところを、パートタイムとして授業と仕事を両立させながら、5~6年ほどで卒業する学生もたくさんいます。学生の10%は留学生で、どんな学生でもここでは受け入れられるという温かい文化があります。
教職員について言えば、ヒューストン大学に限らず、アメリカの大学では一般的に職員、教員は大学の授業を受講する際授業料が免除になるため、修士号や博士号を働きながら取得しキャリアアップを目指すことも可能です。最近ではテクノロジー革新のおかげでオンライのクラスも主流になりつつある学校もたくさんあり、友人の一人は、アメリカに住みながらノルウェーの大学で、もう一人はデンマークに住みながらアメリカの大学で教鞭をとっています。大学の在り方や、働くスタイルも柔軟で多様なのがアメリカの特徴です」

―日本語を学ぶ学生は多いですか?学生は日本の何に関心を寄せているのでしょうか。

ジョンソン「テキサスではメキシコ国境に近いお国柄もあり、スペイン語を受講する学生がほとんどです。ですが、日本語はこの10年ほど一定の人気があり、一クラス30人の定員を超えて、毎年ウエイトリストにはたくさんの受講希望者がいます。スペイン語の場合は、将来の仕事に役立つから、と言う理由で受講する学生が多く、やる気を維持していくのが難しいと聞きます。一方で、日本語は『好きだからやりたい』学生がほとんどのため、一人一人が熱心に学習しています。意外だったのは、アニメや漫画が好きな学生が、思ったほど多くなかったこと。むしろ、学生の多くは黒澤映画や伝統文化等を入り口に、思想や作法といった日本特有の美意識や精神文化に強く惹かれていることがわかりました。授業では、日本の幅広い文化を伝えるようにしています」

―本学の在学生からは「幅広い地域・言語圏の留学生と交流したい」という意見も聞きます。留学生を受け入れる大学側として、どのような工夫が大切でしょうか。

ジョンソン「日本は渡航費も生活費も高くつくので、アジアへの留学を希望する学生は、物価の安い中国や韓国を選ぶ方が多いです。また、中国や韓国へ行くための奨学金もたくさん用意されているという点があります。特に中国の大学は、幅広いプログラムで短期の交換留学が可能なので人気があります。単位認定の有無も、留学先を選ぶ上で重要です。
日本人が英語を学習する理由は、英語が将来の就職に役立つと思うからですよね。留学生側からしても日本語が学べるだけではなく、将来日本での就職につながるような留学プログラムが提供できれば、日本への留学を希望する学生にとって魅力的だと思います。例えば茨大に留学すると地元企業や小、中学校でインターンシップが経験できるとか、茨大卒業後も日本に滞在するための在留資格が取りやすくなるなど、将来日本で暮らしたい外国人が住みやすい環境を整えてあげられるようなサポートがあるといいですね。
アメリカやフィンランドに住んでみてわかったのですが、外国人受け入れという点で日本ではまだ法整備などのインフラが充分に整っていないように感じます。日本に関心を寄せる学生はたくさんいますが、日本で働いたり暮らしたりすることのハードルがとても高いんです。私は、アメリカで日本語を学ぶ学生たちに将来日本に住みたい、日本で働きたいという夢を叶えてあげられるような教員になりたいと思っています」

―将来、ジョンソンさんが日本の大学で教える可能性も?

ジョンソン「アメリカで暮らして16年ほど経ちましたが、今でも日本で先生をしてみたいと思っています。日本での英語教育に昔も今もとても関心があるんですよ!子供の頃からの夢はなかなかあきらめられないものですね」

教壇に立つジョンソン先生

 教育学部の君塚淳一教授の授業でゲスト講師として迎えられたジョンソンさんは、映像やスライドを交えながら、アメリカでの生活や仕事、日本語クラスの学生たちの様子や、日米の小学校教育の違いなどを紹介した。学生からはテキサスの文化等について次々に質問が寄せられた。 「私はアメリカに行ってから、宗教、歴史、経済、政治など、自分が母国について何も語れないことに気づかされた。日本を理解することは、自分が何者なのかを知ることにつながる。海外に目を向けると同時に、日本や茨城にも目を向けてください」と話したジョンソンさん。

 「学生の皆さんには、新しいことにどんどんチャレンジしてほしい。勉強でも、文化でも、言語でも、何でもいい。"わからない気持ち"を知ることが大切。将来教員になった時に、つまずきを抱える児童生徒の気持ちに寄り添えるように。教育には『情熱』が必要です。英語が好きな人なら、ぜひ他の外国語も習得してほしい。英語だけが外国語じゃないから。そして興味のある学会には積極的に参加して。自分から、新しい扉を開けてください」と、後輩たちへエールを贈った。

(取材・構成/茨城大学広報室)