教育学部・小林英美教授が英国出版社アーカイヴで岡倉天心直筆の英文書簡を発見

 教育学部の小林英美教授(英米・英語圏文学)は、英国スコットランド国立図書館に2006年に収蔵されたジョン・マリー出版社アーカイヴ(古文書)の中に、これまで存在が知られていなかった岡倉覚三(天心)の直筆の英文書簡が含まれていることを確認しました。この書簡は、岡倉による初めての英文著作であり代表作でもあるThe Ideals of the East-with Special Reference to the Art of Japan(以下、『東洋の理想』)の第2版が英国のジョン・マリー社から再販されるにあたり、岡倉が出版社に宛てて表紙の修正を求めたものです。

 1903年にジョン・マリー社から出版された『東洋の理想』初版では、表紙の著者名が「Kakasu Okakura」と印刷されていることが謎とされていました。このたび発見された1904年11月24日付の岡倉自身による手書きの書簡では、岡倉が著者名を「Kakuzo」に修正することなどを求めており、「Kakasu」が出版社側の誤解またはスペルミスによって印刷された誤植であることが判明しました。1905年に出版された第2版以降は、岡倉の指摘が反映され、著者名は「Kakuzo」となっています。

 この書簡からは、国際社会ではまだ無名であった岡倉が、初めての英文著作の出版に際して自ら出版社と交渉し、直接的に関係を構築していった過程がうかがわれます。当時の国際的な出版事情や、岡倉が国際的な知識人として世に知られるまでの経緯を考察するうえで、重要な発見といえます。

 11月4日に本学水戸キャンパスで行われた「岡倉天心セミナー」では、小林英美教授と人文社会科学部の市川千恵子教授が19~20世紀英国における出版事情から『東洋の理想』刊行の背景を解説し、このたび発見された書簡の画像が初めて一般公開されました。セミナーでコメンテーターを務めた全学教育機構の清水恵美子准教授は、「今回発見された書簡から、出版にあたって著者が関わらなければならない工程に岡倉が充分に関われなかったことがわかり、岡倉と出版社との関係性が見て取れる。また、書簡の日付や内容から、岡倉が国際社会に進出する上で『東洋の理想』刊行が重要な意味をもつことがうかがえ、岡倉研究者にとって大きな発見」と話しています。

小林英美教授

小林英美教授と新発見書簡(写し)

  

セミナーの様子

セミナーで書簡の内容を解説する小林教授

(2018年11月6日)