人文社会科学部で自治体円卓会議シンポ―若者に選ばれる地域の作り方を探る

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 茨城大学人文社会科学部は、2月15日(木)、学部として連携協定を結んでいる茨城県内の11の市町村との協力による「自治体円卓会議シンポジウム」を開催しました。全体テーマとして「若者世代に選ばれる地域の作り方」を掲げ、会場には学生・教職員のほか自治体職員等、およそ100人が集まりました。

 自治体円卓会議は2013年に発足し、毎年シンポジウムを実施しています。本学の大学院人文社会科学研究科では、今年度から自治体職員の現職派遣を受け入れる社会人コースを新設し、水戸市、石岡市、鹿嶋市、小美玉市、茨城町の各連携自治体から5人の"第一期生"を迎えていることから、今回のシンポジウムはこれらの大学院生による中間成果発表の場にも位置づけました。5人は、今年度取り組んできた常陸太田市をフィールドとした移住・定住に関する調査について報告し、クラウドソーシングを活用した新しい働き方の構築や、仕事と生活がつながって人が人を呼ぶ「常陸太田スタイル」の発信を通じて、「新しい暮らし方をつくる」政策を提言しました。

pic2.jpg そのあとの特別講演では、島根県中山間地域研究センター研究員の東良太氏が、中国地方内で若者が居住選択をしているという市町村を対象とした最新の調査結果を紹介しました。東氏によると、先進的な取り組みによって成果が出ている自治体の事例調査や、移住経験者への量的調査からは、行政の移住促進施策の内容が移住先の選択の理由としてはあまり機能していないこと、都市部との距離といった立地条件によってターゲットやアプローチが異なること、自治体単独での取り組みから外部協働の取り組みへのシフトしていることなどが明らかになったということです。その上で東氏は、「Uターン・Iターンの住民を優遇したり、移住者だけのコミュニティを作るのではなく、地元住民も含めたソーシャルミックスを志向するべき。また、目標を移住に留めるのではなく、コミュニティスクールなどの取り組みにより、その先の定住あるいは人口還流を見据えた政策が必要」と指摘しました。

pic3.jpg シンポジウムの後半では、馬渡剛・人文社会科学部教授がモデレーターを務め、自治体、金融機関、観光産業、実際に移住して地域の取り組みをしている創業者、大学教員といった多様な登壇者によるパネルディスカッションを展開し、それぞれの取り組みや茨城県の状況について議論を交わしました。最後には、各パネラーが「若者世代に選ばれる地域の作り方」のポイントについてまとめ、「茨城県の自治体の場合、移住促進の施策の内容が自治体間で横並びになっていて、強みが見えなくなっている。政策に選択と集中が必要」「結局は地域のことを思い、自分たちで地域資源を見つけ、考える人が増えなければいけない。住民自身がおもしろいと感じない取り組みは結局続かない」といった視点が紹介されました。

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渡辺一洋氏(筑波銀行常務執行役員)

 その地域を訪れた人が楽しんだり学べたりするだけでなく、来てもらうことで地元の人も学べるような、地域住民のための観光、課題提起につながるようなモニターツアーなども考えられる。集中して人が集まる場所が人を引き寄せるのであって、それは具体的な場所を問わない。茨城県の各地域はポテンシャルが高いのだから、自信をもち、その上で今後は選択と集中が必要になる。5年、10年というだけでなく、20年、30年後の次の世代に向けて考えていきたい。

久保田義則氏(JTB関東観光開発プロデューサー)

 ただ来てしてほしい、ということではなく、「こういう人に来てほしい」というイメージをもって、一点突破のように取り組むことが、地域の強みにもつながる。新しい価値を生む人材を呼び込むことは大事だが、同時に、移住することでその人自身の価値が上がるかをきちんと考えなければいけない。今何があって、何が足りないかをしっかりと見つめ、その地域だけの光るオンリーワンを作っていこう。

岡崎靖氏(ポットトラックフィールド里美代表)

 大学進学などで一度外へ出た若者たちが、どこに就職するかよりも、どんな仕事をしたいかを考えるようであれば、故郷へ帰ってきたときにも新しい暮らしを送れるだろう。そうした発想や問題解決のスキルをもった大人を育てていくためにも、移住を促すさまざまな取り組みもさながら、もっと根本に戻って、子どもの教育などにアプローチしても良いのではないか。

東良太氏(島根県中山間地域研究センター研究員)

 行政に対して、つい「あれをつくってほしい」と注文しがちだが、地域の再生においては、「ないものねだり」ではなく、「あるものさがし」が大事。そして見つけたら磨く。それでもないのなら、土の人に対する「風の人」、外部の知恵や力を上手に取り入れる。「ヨソモノ・ワカモノ・バカモノ」というが、そういう人たちを見つけて応援することこそが、行政の役割だろう。

茂垣諭氏(鹿嶋市財政課・本学大学院生)

 民間のステイクホルダーに頼もうとしても、「お金がないと...」という話から進まなくなって、どうしたら良いかが見えなくなることもある。しかし、実は答えなどないのではないか。これまで、間違ってはいけない、間違いはない、というのが役所の仕事とされてきたが、これからは、小さくても良いからちょっとやってみて、ダメならやめる、といった試行錯誤も必要だ。

小原規宏氏(人文社会科学部准教授)

 明らかに都市部と違った暮らし方ができる、ということを明確に示す必要がある。そのためには、移住した人に発信してもらう仕組みが必要。また、最近は行政などの「視察」もツーリズムの要素のひとつになっているが、茨城の自治体は「ウェルカム!」という雰囲気が薄く、取り組みも横並びで、視察が成り立ちにくいところがある。どこかを削ってひとつに絞り、そこに集中してお金をかけていくような発想が求められる。

(2018年2月19日)