工・鈴木智也 教授、AIの集団学習で投資対象銘柄を選出するモデルを発表しジョン・ブルークス賞を受賞

 茨城大学工学部知能システム工学科の鈴木 智也 教授が、金融の市場銘柄の価格変動データを人工知能(AI)の集団学習によって分析し、投資対象銘柄を高い信頼度で選出するためのシミュレーションモデルを構築しました。鈴木教授は、このモデルを示した論文により、合格が困難とされる国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)の資格を取得するとともに、当該年度の受験者の中で最も優秀な論文を提出した者に贈られる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)ジョン・ブルークス賞を受賞しました。同賞の受賞は日本人として3人目の快挙です。
【プレスリリース】工学部・鈴木智也 教授、AIの集団学習で投資対象銘柄を選出するモデルを発表し国際テクニカルアナリスト連盟のジョン・ブルークス賞を受賞-集合知&標準偏差分析の採用で投資パフォーマンスを向上 "フィンテック"の新提案-


5月31日、日本テクニカルアナリスト協会主催の講演会で講演する鈴木教授

 鈴木教授は経済物理学や情報工学を専門としており、特にその対象として株価判断の手法のひとつであるテクニカル分析に取り組んでいます。金融とICT技術を融合する試みは近年「フィンテック」(FinTech)として注目されていますが、鈴木教授の研究も、過去の価格変動についてのビッグデータをAIによって分析・学習し、将来価格の予測に役立てるもので、まさにフィンテックの観点を用いたものです。
 市場銘柄の価格変動のビッグデータを分析し、ニューラルネットワーク(脳神経系をモデルにした数学モデル)を用いて特異な現象などを検出するモデルはこれまでも多く提唱されていますが、鈴木教授は、単体のニューラルネットワークではなく、たくさんのニューラルネットワークを複製し統合する「集団学習」(集合知)のアプローチを新たに採用しました。集団化して多数決をとったり平均値を取得したりすることで予測精度は大きく向上します。
 さらに、鈴木教授の研究では、集団学習のアプローチを採用するにあたって、複数のニューラルネットワークによって示される平均値だけでなく、標準偏差(ばらつき)にも着目している点が特徴です。導かれるデータのばらつきが小さいほど、集合知としての信頼度は高いと判断できるため、売買判断の自信度を評価することが可能になり、適切な投資対象銘柄をリアルタイムに選択できるようになります。
 これらの妥当性を検証するため、この研究では、東京証券取引所とニューヨーク証券取引所に上場されている約1000銘柄に対して投資シミュレーションを実施しました。その結果、0.1%以下の取引手数料で市場インデックスを超える運用益を得ることができました。
 今回の論文は、2017年10月に発行される国際テクニカルアナリスト連盟の機関誌に掲載される予定です。なお、それに先立ち5月31日に日本テクニカルアナリスト協会の主催により会員および一般向けの受賞記念講演を行いました。また、同10月にはイタリア・ミラノで行われる同連盟の大会でも本研究について口頭発表を行う予定です。

茨城大学工学部 鈴木智也 教授のコメント

 株価や投資の判断に使われる分析には、過去の変動データをモデル化して扱うテクニカル分析と、企業の業績から評価するファンダメンタル分析とがあり、日本では後者が好まれる傾向にあるが、金融業務とICTを組み合わせたフィンテックにおいては、テクニカル分析の役割が大きくなってきている。特にAI技術の進化により、ビッグデータを瞬間的に分析して投資のための判断情報を客観的に示せるようになった。また行動経済学の観点からも、感情に流されやすい人間にとって、冷静で客観的なシステムトレードは重要である。さらに今回の研究では、リアルタイムな銘柄選択の指針として集団学習法を活用した「コンセンサスレシオ」を提案し、これまで売買判断が中心的であったテクニカル分析において銘柄選択という新たなフレームワークを追加した。その新規性や有用性について国際テクニカルアナリスト連盟にも評価してもらえたことは大変嬉しい。

関連リンク

茨城大学工学部知能システム工学科知能数理工学研究室(鈴木研究室)

(2017年6月1日)