深海生物テヅルモヅルに未知の種発見━理・岡西政典助教ら、クラウドファンディング活用した成果

 茨城大学理学部の岡西 政典助教らの研究グループが、2014年に学術系のクラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」で資金を獲得し、それらを活用して進めてきた研究の成果が、2017年3月27日(ブルガリア現地時間)、生物学系の学術雑誌「ZooKeys」(オンライン版)に掲載されました。国内の学術系クラウドファンディングで集めた寄付金を主たる資金とする研究の成果が学術論文として雑誌に掲載されるのは、初めてのことです。

詳しくは資料(PDFファイル)をご覧ください。
【プレスリリース】茨城大学理学部・岡西政典 助教ら、深海生物テヅルモヅル類に未知の種を発見 クラウドファンディング「academist」で獲得した資金で研究

本研究で観察したキヌガサモヅル(盤径5.8mm)のCT立体構築画像

 岡西助教は系統分類学を専門とし、おもにクモヒトデ類の深海生物「テヅルモヅル」の分類を研究対象としています。「academist」による研究資金獲得に挑戦したのは、岡西助教が京都大学のポストドクター研究員だった2014年4月でした。テヅルモヅルの仲間で日本にも多く生息する「キヌガサモヅル」のさらなる分類を行うため、DNA配列解析の外注費などの支援を呼びかけたところ、計81人のサポーターから、目標金額の400,000円を超える634,500円の寄付が集まりました。これは、2014年4月に設立された「academist」にとっても最初の成功プロジェクトとなりました。
 岡西助教は、獲得した研究費を利用してキヌガサモヅルのDNA配列の解析を進めるともに、目標金額を超える寄付を得たことで、当初予定していなかったX線による解析も行いました。これらの解析データと、キヌガサモヅルについての記述があるさまざまな言語の論文129本を参照した結果、これまではキヌガサモデルと考えられていた集団の一部を、未記載種(発表されていない新種)として分類できる事が分かりました。今回「ZooKeys」に掲載されるのはX線解析に関する論文で、岡西助教は引き続き関連の研究成果を発表する予定です。
 岡西助教は、寄付を呼びかけるにあたり、金額に応じた返礼として、オリジナルのポロシャツやパーカー、テヅルモヅルの標本などを用意し、さらに10,000円以上の寄付協力者については、論文の謝辞に氏名を掲載することを約束していました。今回発表される論文においては、実際に30人に及ぶ寄付協力者の氏名が並んでいます。
 今回の成果について岡西助教は、「マイナーな研究分野で競争的資金の申請幅が狭いためクラウドファンディングの挑戦を考えた。蓋を開けてみると支援者はほとんど知らない人ばかりで、多くの方々が私の研究に興味を持ってくれているという実感が得られた反面、確実に成果にしなくてはという使命感も生まれた。ご支援を頂いた方々に深くお礼を申し上げたい」と語っています。また、「academist」を運営するアカデミスト株式会社 代表取締役の柴藤 亮介 氏は、「岡西助教のテヅルモヅルに対する情熱が日本全国に伝わった結果、目標金額を大幅に超える支援が得られた。研究者にとって研究費獲得の自由度が増え、支援者にとって研究者との接点が増える環境を構築することで、これからの学術研究の発展に貢献していきたい」と語っています。

◆ 研究概要

 今回、キヌガサモヅル(Asteronyx loveni)のマイクロX線CTスキャンによる非破壊観察を行いました。これは、クモヒトデ綱ツルクモヒトデ目においては初めてのことです。ツルクモヒトデ目は体が厚い皮に覆われており、クモヒトデ類の分類において重要視される骨片や骨格を外部から観察するためには、皮の除去などの破壊的な解剖が必要とされていました。本研究では、X線によって得たマイクロメートル(1ミリメートルの1/1000)の精度の連続断面画像を繋げて、キヌガサモヅルの骨格や一部の内部組織の立体画像を構築しました。その結果、分類を行う上で重要な骨片の形や配置、数ミリの骨片の内部構造(神経孔など)、並びに、腕の中の筋肉繊維を非破壊的に観察することができました。これらの画像から十分な情報が得られたことにより、マイクロX線CTスキャンは、(ツル)クモヒトデの分類を行う上で非常に有用な技術である事が確かめられました。

発表論文の情報

<論文タイトル>
Non-destructive morphological observations of the fleshy brittle star, Asteronyx loveni using micro-computed tomography (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida)

<著者名>
Okanishi, M, Fujita, T, Maekawa, Y, Sasaki, T.

<雑誌名>
Zookeys.(オンライン版)663: 1-19.

<掲載日>
2017年3月27日(ブルガリア現地時間)

(2017年3月28日)