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天心旧居でお茶を愉しむ 観月会「天心邸茶会」

レポート

 日本近代美術の立役者である思想家・岡倉天心は、飛田周山の案内で訪れた五浦の地を気に入り、1905年に六角堂を構えて晩年の活動拠点とした。天心の没後は遺族が居住していたが、やがて五浦日本美術院岡倉天心偉績顕彰会(以下、天心偉績顕彰会)が管理を引き継ぐ。1955年、天心偉績顕彰会の会長・横山大観から寄贈の申し出を受けて茨城大学五浦美術文化研究所が設立され、以来60年以上にわたって、天心遺跡(旧天心邸・六角堂・長屋門)は茨城大学が管理している。
 茨城大学五浦美術文化研究所では、かつて天心が中秋の名月の時期に各界の名士を招いて開いた「仲秋観月会」にちなんで、六角堂や天心邸で美術展や茶会等を催す「観月会」を毎年開催している。10月21日(日)に天心邸でおこなわれた茶会の様子を紹介しよう。

六角堂太平洋を望む六角堂。2011年の東日本大震災がもたらした大津波により流出したが、翌年、創建当初の姿に復元された。

天心邸五浦海岸上空は、見事な秋晴れ。茶会開始時刻の午前11時前には、すでに多くの来場客が天心邸の縁側や庭先に集まって談笑していた。

今回の茶会の亭主は、裏千家の鈴木宗博先生。鈴木先生とともに来場客をもてなす天心偉績顕彰会副会長の桂木なおこさんは、五浦美術文化研究所とともに約20年にわたってこの天心邸茶会を主催している。「正座がつらい方は、足を崩しても良いのですよ」と、優しくもてなしてくださった。「男性ならあぐらでもかまいません。小さなお子さんでも、茶道は初めてという方でも、どなたでも気軽に来て、この気持ちよさを感じていただきたいのです。天心邸でお茶を味わうなんて、なかなかできない経験ですものね」

茶会の様子多くの来場客をもてなす桂木なおこさん(左側一番奥)。

現在の天心邸には、耐震補強のため、天心が居住していた頃にはなかった柱や構造物が備えられている。「当時はこの格子戸も柱もなく、海に向かって部屋が広々と開け放されていました。外の景色がよく見えるようにガラス戸に囲まれたこの座敷は、当時としては非常にモダンで、個性的な建築でした。天心の住まいで現存しているのは、日本でここだけなんです」と説明するのは、五浦美術文化研究所副所長の小泉晋弥教授。来場客は、薄茶を味わいながら、かつて横山大観らの芸術作品によって瀟洒な装飾が施されていたという天心邸の在りし姿に想像をめぐらせていた。

福島県いわき市から家族で毎年参加しているという来場客の一人は、「他のお茶会にはない雰囲気で、毎年の楽しみになっています。歴史的にも文化的にも価値のある建物ですし、いろんなお話も聞けますし。そして不思議なことに、天心邸茶会の日は雨が降らないんですよ」

来場者に説明する小泉教授天心邸の造りを説明する小泉晋弥・五浦美術文化研究所副所長

天心偉績顕彰会の一條潤子さんは、「茨城に、五浦の地に、かつて岡倉天心という偉人がいて若い芸術家たちとともに活躍していたことを、もっと多くの方に知っていただきたいです。ここでは、天心先生がこよなく愛した景色がご覧いただけます。天心邸茶会が、五浦を訪れるきっかけになれば嬉しいですね」と話し、次々に訪れる来場客を笑顔で迎えていた。

天心邸と海

五浦美術文化研究所が開催する「観月会2018」は、11月4日(日)まで。六角堂内に水戸市在住の現代美術家・西成田洋子氏の作品を展示しているほか、11月3日(土)には、近隣の茨城県天心記念五浦美術館で講演会「岡倉天心と高橋健三」も行われる。「観月会2018」の詳細はこちら

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(取材・構成:茨城大学広報室)