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大学生観光まちづくりコンテスト、<茨城代表>茨大チームのリベンジ

レポート

 このほど開催された「大学生観光まちづくりコンテスト2018 茨城ステージ」。民間の都道府県ブランド調査で5年連続の魅力度最下位となっている茨城県の良さを発信し、観光客の増加につながるような企画・アイディアを募集するもので、全国の大学から約100のプランが集まったそうだ。9月5日(水)に茨城県庁で行われた本選では、予選を通過して最終選考に残った10組が審査員の目の前でプレゼンテーション。茨城県内の大学として、この10組の中に唯一残ることができたのが、茨城大学人文社会科学部の地方政治論ゼミナールのメンバーたちだ。

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 緊張感に包まれた茨城県庁の講堂。観覧席にスタンバイする学生たちの中には、お揃いのTシャツを身にまとったチームもあり、熱気も感じられる。茨城大学人文社会科学部・司法政治論ゼミナール(馬渡剛ゼミ)所属の4年生、宮川智子さん、佐藤雄基さん、三浦寿幸さんはそれぞれスーツ姿。佇まいからは、どこか落ち着いた印象も受けた。

 企画メンバーはこの3人に高橋なつきさんを加えた計4人。同コンテストに臨むのは2回目だ。「茨城ステージ」の開催は今年が初めてだが、昨年は地域のインフラを活用した企画を募集するインフラツーリズム部門に、常総市の観光まちづくりプランを提案し、審査委員特別賞のひとつであるJTB賞を受賞した(関連記事)。2年目の挑戦となる今回目指すのは、もちろん最優秀賞である「観光庁長官賞」だ。すべてのチームの代表者がステージに並んだコンテスト冒頭、茨大チーム代表の宮川さんは、「最終選考に残った茨城の大学は私たちだけ。茨城県代表のつもりで頑張りたい」と意気込みを語ってみせた。

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 プランは、新規性・創造性、見込まれる効果、実現可能性、論理的構成といった基準から審査される。事前に対象とする地域での丹念なフィールドリサーチを行い、プラン実現のための協力者を見つけておくことが、大きなポイントとなる。

 今回茨城大学のチームが選んだフィールドは、県北の大子町。今年2月、茨城大学人文社会科学部と大子町は連携協定を締結。教育・研究での協力の機会が増え、町の職員から大学へ寄せられる期待も大きい。学生たちとしてもその期待に応えられるよう、大子町を何度か訪れ、調査やインタビューを重ねた。

 県内有数の観光スポットである袋田の滝を有し、観光が主要産業のひとつになっているものの、人口減少が加速化している大子町。「観光まちづくり」というテーマに鑑みて課題を捉えやすいのか、茨城大学チームに限らず、最終選考に残った10組のうち約半分のチームが県北のこの町をフィールドに選んだ。「茨城県代表」としては負けられない。

 茨大チームの登場は、10組のうち5番目。司会者に名前を呼ばれ、颯爽とステージに登場する。

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 プランのタイトルは、「繋がる街、だいご。」。

 彼らがフィールドワークや文献調査から導き出した大子町の観光の課題は、多くの観光客が袋田の滝だけを訪れ、町内周遊がされていないということ。おのずと宿泊客も少なくなる。観光プランの企画にあたっては、この点を解決するものである必要がある。

 一方、彼らの専門は「観光」というより「地方政治」だ。ただ観光客を呼び込むだけでなく、人口減少や高齢化、空き家・空き店舗の増加という地域の問題の解決につなげたい。チームはその点にこだわり、地域内外の人たちの「交流」を育む観光プランを考案した。メインターゲットは、親子の観光客。加えて、観光においては「ホスト」役と見なされがちな地域のかたがたを「サブターゲット」と定めた。

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 そして、交流につなげるためのコンテンツとして、彼らが着目した地域資源が、「わらぼっち」や「氷花(しが)」といったもの。「わらぼっち」は、脱穀を終えた稲のワラを大きな高く積み上げたもので、まるで大きなどんぐりのような形状が愛らしく、かつては大子町の田園でよく見られたものだ。「氷花」は川の水面に無数のシャーベット状の氷が現れ、流れるという低緯度地域の流氷現象で、世界的にあまり見られない中、大子町の久慈川が代表的な発生地域になっている。これらを活用し、地域の内×内、内×外、外×外の交流が生まれる場を具体的な企画にして提案した(アイディアプランのため詳細についてはご紹介できないのが残念!)。

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 プレゼンテーションは、原稿に目を落とすこともなく、堂々と対応。審査員からは厳しい質問も飛んだが、自分たちの思いをしっかりと伝えた。

 こうしてプレゼンテーションを追え、あとは結果を待つ。10組のプレゼンテーションがすべて終わり、その後の結果発表までの間は、別のフロアに移り、最終選考には残らなかったプランのポスターセッションが展開された。

kanko6.jpg 実は馬渡ゼミからは、4年生だけでなく3年生のチームも出品した。フィールドは水戸。最終選考には残らなかったが、衣装なども工夫し、多くのオーディエンスを引き寄せた。

kanko7.jpg また、茨城大学の学生ではないが、茨大内に事務局を有する茨城県北ジオパークに着目した、宮城学院女子大学のプランも。ここにはジオパーク担当の茨大職員も応援にかけつけていた。

kanko8.jpg さて、ポスターセッションも終わり、最終プレゼンの方は運命の結果発表。
 結果は...

kanko9.jpg 審査員特別賞の「JTB賞」。去年獲得したのと同じ賞だ。プレゼンターを務めた株式会社JTB水戸支店観光開発プロデューサーの久保田義則さんは、「さすが地元の大学というリサーチ力。地元の人も知らない資源に光を当てたのが印象的だった」と称えた。賞を受け取った宮川さんは、支えてくれた大子町の方たちなどに謝意を述べた。

 しかし、メンバーの表情は決して満足していない様子だ。やはり観光庁長官賞をとりたかった。ちなみに同賞を獲得したのは千葉大学の学生チーム。水戸を舞台としたアイディアは、斬新さも実現可能性も兼ね備えていた上、プレゼンテーションも来場者の胸を打つもので、オーディエンス賞も獲得した。

 茨大チームの三浦さんは、「点数を見ると、論理性については評価してもらえたようだ。政治学のゼミとして、エビデンスを示して政策を提案していく、という点はできるだけ丁寧に取り組んできたので、それを評価してもらえたのは嬉しい」と振り返る。一方で、「柔軟さという面では弱かった。視点を変える大事さを後輩たちに引き継ぎたい」と悔しさをにじませながら決意を述べた。佐藤さんも、「われわれが目指すのはあくまで『まちづくり』であって、それが誇り。がんばったと思うし、これからも大事にしたい」と述べた。

 メンバーたちはこれから卒業論文を仕上げ、それぞれ社会へと出ていく。代表の宮川さんが、きりっと言った言葉は、まさにそのとおりだ。

「地元チームとしては悔しい。でも今回の経験は無駄ではない」。

 みんな、ごくろうさま!これからもぜひがんばってください。

kanko10.jpg(取材・構成:茨城大学広報室)