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ボートに乗って北浦の水質を調査!水圏センターの公開臨湖実習に行ってみた

レポート

 今年は「第17回世界湖沼会議」が開かれることでも注目を浴びる霞ヶ浦。8月。茨城県南エリアに大きく広がる霞ヶ浦。今年は「第17回世界湖沼会議」が開かれることでも注目を浴びているが、その霞ヶ浦(北浦)を臨む茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター(水圏センター)では、毎年恒例の「公開臨湖実習1『湖沼環境問題の最前線―霞ヶ浦での調査・実験から理解する』」が行われ、全国から学生たちが実習に訪れている。8月21日に行われた北浦での調査実習の様子を、私たちもボートに乗り込んで取材した。

photo1.jpg この日の朝は曇天。センターから徒歩5分のところにある船着場から見える向こうの湖岸の街並みは、深い霧に覆われ、幻想的な雰囲気さえ漂う。一方で湖面はアオコで全面緑色、グレーの空と不思議なコントラストを成している。風は少なめで湖面もおだやかな様子だが、アオコによる独特のにおいがつんと鼻をつく。

photo2.jpgボートの準備 湖面はアオコで緑色だ

 船着場には側面に「茨城大学」と記されたボートが3艇。今回の実習に参加する学生は、全部で11人。このうち茨城大学教育学部の学生が4人、それ以外は他の大学からの参加だ。北は北海道から南は長崎まで、全国の大学から学生たちが訪れている。

 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センターは、文科省から「教育関係共同利用拠点」に認定されている。湖沼関連の施設としては全国で唯一の認定だ。水産関係の学部がある大学でも、臨海施設はあっても臨湖施設はないというところも多く、湖沼の研究をしたいという学生が毎年霞ヶ浦へやってくるのだ。

 黄色い救命胴衣をまとって乗船。いざ、出発。大きく開いた水門の下を通って、湖の中央部へと向かう。われわれ広報スタッフのボートを操縦してくれるのは技術補佐員の金子さんと大学院生の川上さんだ。

photo3.jpg広報チームのボートを操縦してくれた金子さんも茨城大学の卒業生だ

 ボートは時速40キロのスピードで、水しぶきをあげながら進んでいく。頬にあたる風が心地よい。中央部に着いたらボートをとめ、碇をおろす。中里亮治准教授が調査のスタートを呼びかける。

photo4.jpg霧が立ち、ファインダーから覗く世界は水墨画のよう

 まずは透明度の計測だ。湖の透明度を測る仕組みは思いの外シンプルで、メジャーのついた白い円盤を水の中に沈めていき、途中で上げ下げしながら、湖上から円盤が透けて見える位置と見えなくなる位置の境目となる深さを測る。

photo5.jpgセッキ板を沈めて透明度を測る

「透明度を測るこの道具は、『セッキ板』といいます。『セッキ』というのは考案した人の名前です。セッキさんが調査のために海軍の船に乗った際、船のコックさんが洗っていた白いお皿を誤って海に落とし、それが沈んでいく様子を見て、セッキ板の仕組みを思いついたとか...」

と、中里准教授が解説。学生たちも広報チームも、「へえー」と思わず目を丸くしていた。

 一見簡単そうな作業だが、慣れない学生にとっては、結構難儀。ボートからではなく、水面からの深さを測るから、上半身を船から伸ばす必要がある。交替しながら全員が体験し、それぞれの計測値を記録していく。

 ちなみにこのポイントの計測値としては50cm程度。思ったよりは深いところまで見えていたようだ。

 このあとは、水温やpHなどを計測。全員にくまなく体験してもらうから、充実した実習になる。

photo6.jpgまずは中里教員がバンドン採水器の使い方を実践

 次は、水と湖底の泥を採取する作業だ。

 採水には、「バンドン採水器」というロープのついた円筒状の器具を使う。これなら表面ではなく、さまざまな深さの水を採ることができる。湖の一箇所に船を止めて調査をするといっても、サンプルはひとつではない。むしろ、深さごとの水質や生態系の違いを知ることが大事なのだ。今回の調査ポイントは、深さがだいたい6メートル。分担しながら採水や測定を進めていく。

photo7.jpgエクマンバージ採泥器で湖底の泥を採取

 湖底の泥のサンプルを採取するのには、「エクマンバージ採泥器」という金属製の道具が使われる。15センチ角の箱とユーフォーキャッチャーのクレーンが組み合わさったような形状で、クレーンを開いた状態で湖底まで下ろし、上からおもりを落とす。そうするとクレーンがパカッと閉じて、箱の中に泥が集まる仕掛けだ。それを引き上げ、余分な泥を落として、ビニル袋に採取する。

photo8.jpg泥にはどんな生物がいるだろうか

 ビニル袋を見せてもらうと、小さな赤いワームの姿が見えた。ユスリカの幼虫で、釣りの餌にも使われるアカムシだ。このユスリカの幼虫が湖底に堆積した有機物を摂取するとともに、魚などの生物の餌になるのだから、湖の生態系にとってはきわめて重要な存在だといえる。このあと、センターに戻って観察するそうだ。

photo9.jpg中央の赤いひものような生物がユスリカの幼虫(種名はオオユスリカ)

 全員参加の一連の作業は、1時間ちょっとで終了。このあとは、岸に近いほうに移動して、また同じ作業を繰り返す。それぞれの器具の使い方をおさらいしながら、湖の中央部と湖岸部分との水質や生き物の違いを知ることが目的だ。

photo10.jpgこのボートの名前「MODERATA」はオオミドリユスリカという種の学名の一部だ

 この頃になると、学生たちの動きもこなれてきて、調査の姿がさまになってくる。

 街並みを覆っていた霧も晴れて、空も青い部分の面積が大きくなった。湖面の色も、早朝の緑色とは表情が変わり、空の青を映している。気温も上がってきた。

 午前中3時間で、北浦の多様な表情に、風景、湖面、水質、湖底と、あらゆる切り口で触れることのできる、実りある実習だった。

関連リンク

  • 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター

    淡水域、汽水域、沿岸域、水に関わる地域の環境科学の研究教育を行う全学共同利用施設です。2013年より臨湖実験所としては全国初となる教育関係共同利用拠点として認定され、全国の学生たちがフィールド実習や研究のために利用している。

    〒311-2402 茨城県潮来市大生1375 Tel: 0299-66-6886(代表)

(取材・構成:茨城大学広報室)