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学生発案によるバス案内板が水戸駅にお目見え―水戸市と公共交通の課題に取り組み成果

レポート

 水戸駅北口のバスロータリーに新しいバス案内板がお目見えした。バスで移動できる主要なスポットを表示し、そこへ行くには何番のバス停で乗り、運賃はいくらかということが一目で分かる。この案内板、茨城大学人文社会科学部の「プロジェクト実習」という授業において、10人の2年生が水戸の交通政策の課題に取り組む中で発案し、実現したもの。3月27日、学生らの立ち会いのもとお披露目式が行われた。

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 「プロジェクト実習」は、初めて授業が開講されてから今年で6年目。学生たちは1年間かけて自治体や企業などと課題に取り組み、成果を出す。受講生の中には茨城大学だけでなく、茨城キリスト教大学や常磐大学の学生たちもいるのが特徴だ。

 ここ数年水戸市役所と取り組んでいるテーマは、「こみっとフェスティバル」と「公共交通政策」。このうち公共交通政策については、最初に交通政策課の職員からバスや鉄道、道路などをめぐる現状の課題について説明を受け、その後は一緒に議論をしながら課題解決につながる手立てを探っていく。いろんなアイディアを検討する中で今年度のグループが目をつけたのが、水戸駅北口のバスロータリーに設置されたバス案内板だった。

といっても、これまでどんな案内板が立っていたのか、思い出せないという人も少なくないだろう。メンバーのひとり、人文学部2年の五位渕梓さんも、「そもそも案内板があること自体、あまり認知されていませんでした」と振り返る。

 2010年から使われていた従来の案内板は、すべての路線・バス停を記載した複雑な地図状のものだった。字も小さく、よくバスを使う高齢者には見づらい面があった。お披露目式に出席した茨城県バス協会の澤畠政志専務理事も、「利用者はまず案内板で調べるが、これまではバス会社の目線で作られており、判りづらいものでした」と指摘。実際に学生たちの聞き取り調査では、「ロータリーのどのバス停から乗れば良いのかわからない」「どのバスがどのICカードを使えるのかがわかりづらい」といった声が聞かれたという。

bus2.jpg幕を外して新案内板を披露

 そして改善された新しいバス案内板。今回で工夫した点は3つだ。

 まず、すべてのバス停を書き入れるのではなく、主要な行き先を30ヶ所程度に絞り、大きく表示したこと。茨城交通の任田正史社長も、「ごちゃごちゃしていたのがすっきり整理された。これだけでも8割ぐらいのお客さんをカバーできる」と太鼓判を押す。

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 ふたつめは、それぞれの行き先に行くには、何番のバス停に乗り、運賃がいくらかかるかを一緒に記したこと。「一目で情報がわかるようにした」と、人文学部2年の大場貴史さんは胸を張る。

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 そして3つめが、バス会社ごとに使用可能なICカードの情報を、イラストを使って表記したこと。聞き取り調査の結果が活かされた。

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 毎日散歩で案内板の前を通っているという男性も、新しい案内板にさっそく目を留めた。「前のと比べたらだいぶよくなったね。これが学生の発案と聞いてビックリしたよ」。

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 今回、アイディアを実現するために、学生たちが「茨城県公共交通活性化会議・利用促進会議助成金」に応募。見事認められ、30万円の支援を得ることができた。

 学生たちとともにプロジェクトに取り組んできた水戸市交通政策課の須藤文彦課長は、「バス路線を案内するというのは実はとても難しい。そうした中で、学生自身が必要な情報を吟味し、選び取って形にできたというのは大きな成果。何よりも、行政がつくるのではなく、学生たちがこうした公共の案内板を変える経験をしたことで、今後、『そろそろ古くなったから変えよう』という形で引き継がれるものになれば、これこそ実習の価値といえるのではないか。当初は年度内に実際に取り付けられるか不安だったが、ここまでたどり着けてよかった」と胸をなで下ろした。

 授業を担当した人文社会科学部の鈴木敦教授によれば、「こうしたパーマネントな設置物をつくるまでに至ったことは、プロジェクト実習としても初めて」とのこと。

 学生たちは自分たちが手がけた案内板を、目を輝かせながら見上げ、「この案内板を見て、ひとりでも多くの人にバスを利用してほしい」(五位渕さん)と期待を寄せる。

bus7.jpg掲示板には「プロジェクト実習」履修学生の取り組みであることが明記されている

(取材・構成:茨城大学広報室)