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女性活躍のために有効な政策は?学生と市職員が調査データをもとに本気で議論

レポート

「女性が出産後も仕事を続けやすい環境をどうつくる?」「男性や企業の意識を変えるには?」―女性の活躍を支援するための政策について、学生と水戸市の職員が一緒になって考えるワークショップが、先日行われた。学生たちは、公開されているデータの分析や全国の都市へのヒアリングなどから望ましい政策や課題を考え、市職員にプレゼン。後半はグループワーク形式で政策提言をまとめた。

ibdaikh20170728_075.JPG 7月28日(金)に水戸キャンパス図書館で行われた「データ分析による政策立案 実践教育ワークショップ『女性活躍を支援するために、自治体は何をすべきか』」。企画したのは人文社会科学部の後藤玲子教授(経済政策論・社会情報学)で、教授のゼミに所属する3・4年生14人と研究生2人、そして水戸市の職員8人が参加した。

 前半は3年生たちによるプレゼンテーション。学生たちは春から調査・分析に取り組み、準備をしてきた。

 最初は男子学生4人のグループ。テーマは「男性の育児休業取得率及び取得期間を高めるために、自治体は何をすべきか?」。グループでは厚労省のデータなどから育児休業制度利用の実態を紹介。そこから、男性の育児休業取得を阻害する要因を、①仕事の代替要員がいない、②経済的に負担になる、③上司に理解がない、④復帰に不安がある、という4点にまとめ、それぞれの観点から、働き方の改革に意欲的な企業数社の事例調査を行った。それらを踏まえ、民間企業における有効な対策として、育児休業の有給化などを提案。また、政策面については、3ヶ月以上の育児休業取得を条件としている国の両立支援等助成金の現行制度が、多くの男性の育児休業取得期間が5日未満という現状にマッチしていない、と指摘。実態にあわせた政策転換が必要と提言した。この提言に対しては、市職員から、「助成金を実態にあわせることは大事だが、5日未満という現状が固定化してしまっては意味がない。適正な取得期間はどの程度だと考えるか」といった質問も出ていた。

ibdaikh20170728_024.JPG  2番目のグループは、水戸市の状況に着目。水戸市の女性管理職の割合が、全国の中核都市の中でも高くないことを指摘し、データの分析をもとに、女性管理職割合の高さと、女性職員割合や女性採用者割合の高さとの間に相関があることを示した。その他、残業時間や管理職の意識に関する統計も参照し、①女性の受験者割合を増やす、②残業を人事考課に関係させない、③残業自体を減らす、④仕事と生活の両立支援 という対策の枠組みを設け、女性管理職率の高い市へのヒアリングを実施して、女性向けの説明会を開催すること、勤務時間の多様化、テレワークの導入といった具体策を得た。発表した学生は、「各市が公開しているデータが必ずしも比較可能な形ではないので苦労した。その中で水戸市はさまざまなデータを、参照しやすい形で公開していることが印象的だった」と振り返った。

ibdaikh20170728_037.JPG  そもそもこの取り組みは、統計データなどの実証的な根拠をベースとした政策立案(EBPM:エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)について、学生と現役行政職員が実践的に学ぶ場として企画された。今回ワークショップに参加した水戸市の情報政策課・男女平等参画課と後藤教授とは、以前からEBPMの共同研究や勉強会を行ってきた。今回の学生のプレゼンテーションも、データに裏付けられた政策提案であり、十分な説得力をもたせることができていた。

 後半は、まず、水戸市男女平等参画課の飯村久美さんが、水戸市における女性活躍支援策を紹介。それを踏まえ、社会(特に男性)の意識啓発のために水戸市は何をすべきか、という問いを示し、グループワークに移った。3班に分かれてのグループワークでは、3年生がファシリテーターを担当。KJ法とマトリクス法を使い、限られた時間の中でアイディアを構造化することに挑戦した。

 あるグループでは、すぐに実現できそうなアイディアとして、「男性の育児休業について、1日間からお試しできる制度を作っては?」という提案があり、それに対して「そこから1週間、1ヶ月と段階的に延ばしていく仕掛けが必要」「その期間に本当に育児をしたかどうかのチェックもあるべき」といった意見が出るなど、議論が深まっていた。

ibdaikh20170728_082.JPG 最終的には、どのグループからも、即効性のある取り組みとして各種セミナーを開くことやICTの利活用が提案されたが、一方でその中身こそが問題、という指摘も忘れなかった。その他、「『これからパパになる』アピールをしっかりする」「男性をもっと褒めるキャンペーンを行う」などユニークなアイディアも多く示された。

ibdaikh20170728_122.JPG  後藤教授は市職員に対し、「すぐできるアイディアも出てきた。ぜひ実際に取り入れてほしいし、実現したら教えてほしい」と呼びかけた。

 後藤ゼミのゼミ長として、グループワークのファシリテーションも務めた人文学部3年の土岐 稜 さんは、「2~3ヶ月調査してきた成果は発揮できた。自治体の方と話すことで新しい考え方や視点を得ることができて、これからの研究や就活でも役立つと思う。また、就活の企業選びでは、今まで給与面ばかりを見ていたけれど、今後は育児休暇の取得率などもチェックするようにしたい」と述べた。

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