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「変わらないことは死ぬことより恐ろしい」学生インタビュー:アーティスト あめのいちさん【C-mail】

学生ライター

アーティスト あめのいちさん

 学校の先生や親の言うとおりにして流された結果、自分を見失う。――誰もが心当たりのある経験だと思う。

 「流されていい子に生きてきたことに後悔しているから、自分を取り戻すために自己表現しているんですよね」。そう語るのはあめのいち(作家名)さん。
 彼女の作品にはしばしば『死』が表現される。かつて彼女は学業に熱中するあまり体調を崩し、それに追い討ちをかけるように母が大病を患った。それから1年、『死』が身近なことであると体感した彼女は、自身の葛藤をキャンバスに描き続けたという。

 取材でたびたび口にしていたのが「変わらなければ」「いつ死ぬか分からない」という言葉だ。「なに、ボサッとしてるんだ!」「なんとなく日々を過ごしている人がいたら、今すぐ肩を揺さぶりに行きたいよ。」「生命の危機を感じてくれ!」と続く。

 「でも、自己表現で自分を変えられたっていうのは、特技があったからこそできたことですよね。自分を変えたくても、何の取り柄もなかったら、どうすれば良いんですか」と問うと、「無意識を信じろ、という心理学者の言葉があってですね......明確な目標はなくてもいいから、とにかく自分の惹かれることをやっていったらおのずとなりたい自分になれると思うんです」との言葉をくれた。

 「止まっていることは心地良いです。でも、新しいことをするためには心地良い今の世界を壊すことも必要。少なくとも私は、『いい子』のまま死ぬのが嫌だから変わることを決めました。自分にとっては、変わらないことは死ぬことより恐ろしいですね」。

 『死』に感化された彼女は、自分自身のことだけではなく、アートのあり方さえも変えようとしている。下の写真は東京で行われた個展の様子。作家の自宅を模した空間は、アートになじみのない人もリラックスして楽しめる配慮がされていた。

アーティスト あめのいちさんアートをより身近なものへ。
ベッドを持ち込み、寝ながら客を待ち構えるのが彼女の展示スタイルだ。

 「タイが好きなんですけど、タイって仏教や死というものが生活の一部として認識されているんですよね。ギャルみたいな女の人が、通りかかった礼拝場でいきなり姿勢を正して祈りはじめたときはビックリしたな。棺桶も派手だし、全体的に明るい。日本では少しとっつきにくくて静かなイメージなのになぜ? それって、アート的なイメージ操作が加わっているからなのかと。日本と同じ仏教でも、伝え方を変えれば身近なものになる」。

 芸術は、それに触れる機会のない者にとって少し近寄りがたい世界だ。だが、タイの仏教のように伝え方を「変えて」いけば、きっと芸術は開かれたものとなる。知識人だけではなく、多くの人が関われるコンテンツへと、アートを身近に、死を身近に。

 「いつ死ぬか分からない」あめのいちさんの表現活動はタイの仏教のように身近な伝え方で、見る者に死の存在を訴えかけているようだった。

【プロフィール】

あめのいち 本名:広瀬玲菜 教育学部情報文化課程4年

アーティスト。個展「ドローイング展『此岸マイルーム』」(2016年8月)など。

アーティスト あめのいちさん

※この記事は茨城大学の学生が自ら企画・取材・編集するマガジン「C-mail」No.217に掲載されたもの(一部改変)です。C-mailはこちらでご覧いただけます。